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[19]演劇と現実の境目がなくなった1週間

金平茂紀 TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

1月31日(火) きのうの辺見庸講演会の余韻がまだ心の中にずっしりと残っている。午前10時、局で定例会議。ますます漂流感覚がつのる。「沖縄タイムス」用に『新・ワジワジー通信23』の原稿を送る。ダコタ・アクセス・パイプラインの状況が激変したので、随分以前に『越境広場』用に書いた原稿もアップデートしなければない。追記の形で何とか書かねばならないが頭の整理がつかず完成できず。早稲田の修士論文口頭試問の試験官なのでその準備が必要だ。映像作品の方はすでにみているが、論文をきちんとチェックしなければ。あさってみる演劇『ザ・空気』を、CSの「ニュースの視点」でとりあげることになった。そのための取材許可を二兎社にお願いする。

2月1日(水) 「週刊現代」のコラム。書き上げてメール。午後から早稲田の修士口頭試問。台湾と中国からの留学生2人について。台湾の留学生の映像は、ひまわり運動に触発されて国政選挙に立候補した若い女性をテーマとしたドキュメンタリーだったが、実に興味深い内容だった。台湾や香港には未来につながる活力がある。『越境広場』の追加分を何とか書き上げてメールする。気がつくともう2月になっている。

『ザ・空気』をみて、頭がクラクラして

2月2日(木) 「クレスコ」の原稿。テネシー州で出会ったイスラム教徒の少女ジェンナについて。「週刊現代」のコラム、行数を間違えて担当のOさんから足りないと連絡が入り、あわてて書き足す。

二兎社の演劇公演『ザ・空気』演劇公演『ザ・空気』=二兎社のサイトより
 東京芸術劇場シアターイーストの二兎社の演劇公演『ザ・空気』をみる。予備知識を全く排除して、いきなりぶっつけ本番で舞台をみた。もともとは去年の10月だったか東京・練馬で教育関係の講演をした際に、劇作家の永井愛さんが突然観客席の中から見えられて、テレビ報道のことをテーマにした劇をつくったので、みて欲しいと話しかけられたのがきっかけだった。それが、あれよあれよという間に、劇上演後のポストトークに永井さんとご一緒することになってしまったのだ。

 この日、シアターイーストは満席だった。それどころかキャンセル待ちの人々が列をつくっていた。連日のことだという。テレビ報道をテーマにした演劇に何故これほどの観客が押し寄せるのか。客席に座って劇の開始を待っていたら、客席の中から赤石千衣子さんがきた。彼女もシングル・マザーとして、かつて永井愛さんの戯曲のテーマになったのよという趣旨の会話を交わす。

 劇が始まる。息苦しくなるほどの切迫感があった。と言うのも、

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