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インドで熱烈歓迎された日本の音楽ユニット

日・印の文化交流には大きな可能性

児玉克哉 社会貢献推進国際機構理事長、インドSSI大学国際平和創造研究センター所長

インドの子どもたちに囲まれてのコンサート

 インドは急速な成長を遂げつつある。「眠れる巨象」といわれて久しいが、やっと巨象は眠りから覚醒しつつある。13億とも言われる人口を抱え、国土面積も日本の9倍近い。世界最後の超大国となるといわれる。

 インドと日本の関係は、歴史的にも強いものであった。仏教はインドから日本に伝わったものであるし、その後も何世紀にもわたり、インドと日本は文化的交流を続けてきた。しかし、戦後、インドと日本の文化交流は必ずしも活発であるとは言えなかった。お互いに漠然とした好意を持っていて、重要で根強い文化交流の流れがあるものの、他のアジア諸国と比較して、インドと日本の交流は限定的であったといえる。

 今、インドと日本は急速に接近しており、文化交流もかつてないほど活発化している。インド政府も日本に対して特別な配慮をしており、空港で取得できるアライバルビザは現在のところ日本人だけに適応されている。潜在力のあるインドとの関係強化は、人口減と高齢化により活力を失いつつある日本にとって、未来への希望と言って過言ではない。日本の技術により建設が進められているアフマダバードとムンバイを結ぶ新幹線構想は、インドと日本の良好な関係の象徴となっている。

ガンジーゆかりの地でコンサートツアー

 そのインドで、音楽ユニットである「神雅氣」(Shinki)が4月にコンサートツアーを実行した。マハトマ・ガンジーゆかりの地であるアフマダバードでの一連のコンサートは、今後のインドと日本の文化交流を考える上でも重要なものとなった。アフマダバードのあるグジャラート州は、インドで最も工業発展が目覚ましい地域である。モディ首相は、グジャラート州の州首相であったが、工業発展の実績をもってインド首相に選出された。ガンジーの流れをくむ精神的な拠点であり、同時に産業の拠点でもあるアフマダバードでのコンサートツアーはメモリアルなものであった。

 神雅氣はこのアフマダバードの6カ所でコンサートを開催したが、どの会場でも熱気に溢れ、スタンディングオベーションの連続であった。インドの活力とともに、日本とインドの文化交流の今後の可能性を感じさせてくれるものであった。この成功の要因を考察し、今後の展開を構想してみたい。

成功の要因

JG芸術大学でのコンサート

 まず、インドの活気の高さである。インドは13億の巨大人口を抱えるだけでなく、こどもの割合が極めて高い国である。こども数ではすでに中国を抜き、世界一だ。1960年代の日本のような活力がある。若者は社会を変革させ、創造していく。日本が少子高齢化によって成熟社会に入っているのと比較すると、大きな差を感じざるを得ない。

 次に、インドでの音楽文化の蓄積の大きさも指摘しておきたい。インド映画は巨大マーケットを持つ産業として育っている。音楽やダンスは重要な役割を持っており、子どもから高齢者まで、生活の中にも入り込んでいる。神雅氣の音楽のレベルの高さだけでなく、それを吸収するインド社会の音楽への受容性の高さも素晴らしいものがある。まだ、日本の音楽界はインドへの進出は限定的だ。これから音楽においても急速な成長が見込める国だ。

 3番目のポイントとして、グジャラート州ではインドと日本の交流の蓄積が強くあったことが挙げられる。今回のコンサートツアーのコーディネートの中心となった日本情報センターは、インドで最初にできた日本との文化交流のセンターである。継続的に日本文化をインドに伝える活動を行ってきている。今年の1月には日本、世界で「ダンスうんどう」を広めている小林英夫氏がアフマダバードを訪れ、多くの学校で文化交流を行っている。

 昨年は、安倍首相夫妻がグジャラート州アフマダバードを訪問し、モディ首相との関係だけでなく、地元の民衆から激烈な歓迎を受けた。また

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