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早稲田大学は泥仕合覚悟で小保方氏の学位を剥奪すべし

佐藤匠徳 生命科学者、ERATO佐藤ライブ予測制御プロジェクト研究総括

 今月初旬に正式に取り下げられたSTAP細胞の論文の筆頭著者である理化学研究所の小保方晴子ユニットリーダーが、3年前に早稲田大学に提出した博士論文について、早稲田大学が設置した調査委員会(委員長・小林英明弁護士)の調査結果が発表された。

 19日に全文がネットに公開された報告書によると、著作権侵害などの不正を認定、「論文の信憑性や妥当性は著しく低く、審査体制に重大な欠陥がなければ、博士の学位は授与されることは到底考えられなかった」「博士学位を授与されるべき人物に値しない」「早稲田大学における博士学位の価値を大きく毀損(きそん)するもの」としながらも、早稲田大学の学位取り消しの規定にある「本大学において博士、 修士または専門職学位を授与された者につき、不正の方法により学位の授与を受けた事実が判明したときは、総長は、当該研究科運営委員会および研究科長会の議を経て、既に授与した学位を取り消し、学位記を返還させ、かつ、その旨を公表するものとする」(早稲田大学学位規則第 23 条第 1 項)には当たらないとした。小保方氏の博士論文には、「不正の方法」に該当する部分があったものの、「そのいずれもが、学位授与に重大な影響を与えたとはいえず、これらの問題箇所と学位授与との間に因果関係があったとはいえない」というのである。つまり、これらの不正の方法があったが故に博士号を修得できたのではないと結論づけたのだ。

 また、報告書には、博士論文の基となる実験は実際に行われており、それらをまとめた研究結果は査読付きの国際科学誌に論文として発表されているので、博士号に値する研究は行われたといった意味の記述もある。これら全てを考慮の上、「博士号の取り消し要件には該当しない」と結論づけた。

 一方、小保方氏の指導教官であり、博士論文の主査である常田聡氏、また副査の武岡真司氏の「指導不足、義務違反」などを指摘、常田氏は「非常に重い責任」、武岡氏は「重い責任」があるとし、また、「製本された最終的な完成版の博士論文の内容を確認する体制の不存在、第三者的立場の審査員の不存在、主査・副査の役割・責任の不明確さ、主査・副査が論文を精査するための時間等を確保するための体制の不備、及び審査分科会構成員が論文を精査するための時間等を確保するための体制の不備」という、制度上及び運用上の欠陥・不備も指摘した。

 筆者がこの報告書を読む限り、調査委員会の結論は規定に従っており、論理構成に問題点は全くない。

 しかし、その正しい調査委員会の結論を無視することになっても、早稲田大学は小保方氏の博士号を剥奪すべきである。筆者がそう考える理由を以下に述べたい。

日本の高等教育の下等化問題

 今回の結論が成立する背景には、現在の多くの日本の大学院が抱える「高等教育の下等化問題」が潜んでいると筆者は考える。「下等化」とは、

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