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日本のナショナル・トラストに50年目の試練

米山正寛 ナチュラリスト

  「地域自然資産区域における自然環境の保全及び持続可能な利用の推進に関する法律(自然資産区域法)」が6月まで開かれていた第186国会で成立した。新しく設けられる地域自然資産区域とは、自然環境を保全・利用する経費として都道府県や市町村といった地方自治体が入域料を取る区域、さらにNPO法人や自治体などが自然環境トラスト活動を行う区域を指す。ここでいう自然環境トラスト活動は、豊かな自然を守るために土地を取得する行為であり、民間団体が広く寄付金を集めて土地を購入して自然を守ってきたナショナル・トラストと呼ばれる活動と同じと考えていい。法律名からは分かりにくいが、国や地方自治体の財政難という事情を受けて、自然環境の保全と持続可能な利用のための資金として、入域料という利用者負担で施設整備を進めたり、寄付による民間資金の活用で土地取得を図ったりする意図から成立した法律と言える。 

ナショナル・トラストの活動が始まった頃の鶴岡八幡宮周辺=神奈川県鎌倉市ナショナル・トラストの活動が始まった頃の鶴岡八幡宮周辺=神奈川県鎌倉市
  今春、自民党からの議員立法でこの法律案が浮かび上がった当初は、自然環境トラスト活動に取り組む団体を自然環境トラスト法人として、知事などが認定するとの条項も含まれ、認定してはならない条件も挙げられていた。ナショナル・トラスト活動は自治体の認めた開発計画に対する市民レベルの抵抗の手段として根付き、日本の社会に広がった歴史がある。それなのに、自治体のお墨付きを得た団体が優先的にナショナル・トラスト活動を展開できるような事態になれば、いったいどうなるのかという懸念が、法案提出の動きをつかんだナショナル・トラストの関係者に広がった。
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