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何と日本的。「女子に三角関数、何になる?」発言

伊藤鹿児島県知事、あわてて撤回するなど日本男児として恥ずかしいですよ

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

 鹿児島県の伊藤祐一郎知事の女性差別発言は、「日本的なるもの」をしみじみ感じさせる出来事だった。九州の風土という面もあるのかもしれないが、やはり日本の中枢を占める男性陣の多数派の発想がそのまま出たという面の方が強いと思う。あわてて撤回して表面だけつくろうというのも、日本ではお定まりの作法だが、こんな撤回は誠に恥ずかしく、日本男児なら潔く発言を認めて謝罪するのが筋だということぐらい、せめて気づいてほしい。

伊藤祐一郎・鹿児島県知事

 南日本新聞によると、8月27日に開かれた県の総合教育会議で伊藤知事は「高校教育で女の子にサイン、コサイン、タンジェントを教えて何になるのか」「社会の事象とか植物の花や草の名前を教えた方がいい」と述べた。

 28日の会見で発言の真意を問われた知事は「サイン、コサイン、タンジェントの公式をみなさん覚えていますか。私はサイン、コサインを人生で1回使いました」「女性を結びつけて口が滑った形でしゃべった」などと釈明し、発言を撤回する考えを示した(朝日新聞デジタル)。

 つい思い出すのは、英国のノーベル賞学者ティム・ハント氏の6月の女性差別発言である。「研究室に女性がいると面倒が起こる。男性が女性に恋をする、女性が男性に恋をする、そして女性を批判すると泣き出す」と韓国で開かれた科学ジャーナリスト世界会議の昼食会で述べ、大問題になった。

 両者を比べると、日本的なるものが浮かび上がる。

 まず、伊藤知事は、女性が科学知識の必要な職業に就くことを想定していない。想定していないから、そういう教育は必要ないという発言になる。一方、ハント氏はその後に続いた発言で「だから研究室は別々がいい」と言っており、女性が研究者になることは当然の前提としている。

 次に、伊藤知事の釈明は「口が滑った」である。ハント氏は「あれはジョークだった」だ。「口が滑った」というのは、心の中にあるものをつい言ってしまった、ということだ。思っていることをそのまま言うのは、本来なら歓迎されることだ。日本にはどこかに「思っていることをそのまま言ってはいけない」という規範があるから、あるいは面従腹背は当然のことで表面だけつくろうように奨励されているから、「口が滑った」が言い訳として通用してしまう。おそらく

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