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ミスしない人はいない、宇宙飛行士だとしても…

1つの失敗が命取りに――宇宙生活でも大事な「ホウ・レン・ソウ」

油井亀美也 宇宙飛行士

 日本へ帰って来て、様々な方と話す機会が多くなりました。そんな中で驚くのは、「宇宙飛行士はミスを犯すことの無い完璧な人間」だと思っている方が多いことです。

 「宇宙でのミスは命にかかわる」という言葉から生まれた認識なのかもしれません。この言葉は、確かに正しい側面もあります。宇宙という環境は、皆さんが想像する以上に過酷な環境で、空気もなく、放射線量も多いですから、人が住める環境ではありません。その場所に、科学の力で人が住める場所を作っています。よって、そのシステムが働かなくなることは、死を意味します。ですから、そのシステムを作るエンジニアや運用する宇宙飛行士がミスをするのは、極めて危険です。

多重の安全システムで守る

 他方で「人間は必ずミスをする」というのは、100%正しい言葉と言って良いでしょう。これは、宇宙飛行士も人間である以上、例外ではありません。皆さんの周りでも、生まれてから一度もミスをした経験が無いという人を探すことは出来ないと思います。もし、「自分はミスをしない」という人がいたら、自分のミスに気付いていないか、ミスを公表することが出来ない人なのかもしれません。実は、仕事をする上で最も危険な人は、ミスを犯す人ではなく、ミスに気付かなかったり、ミスを公に出来なかったりする人なのです。

運用管制チームP日本の無人補給船「こうのとり」5号機を国際宇宙ステーション(ISS)のロボットアームでキャプチャーするため、補佐をするJAXA・筑波宇宙センターの運用管制チーム(JAXA/NASA提供)

 「宇宙でのミスは命に関わる」そして「人は必ずミスをする」。この事実を踏まえつつ、安全を保つことが出来るようになっているのが有人宇宙開発です。

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