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環境影響評価で滞る風力発電

パリ協定に逆行する石炭火力発電の増設

松田裕之 横浜国立大学大学院環境情報研究院教授、Pew海洋保全フェロー

 最近の日本の環境影響評価(EIA)制度は、ほとんど発電所のためにあるといっても過言ではない。2016年12月2日現在、EIA手続き中の事業178件のうち、発電所が159件で、風力が135件、火力が22件(うち、石炭火力が5件)、水力と地熱が1件ずつである。1999年にEIA法が制定された当時は、ダム、埋立て及び干拓、区画整理などの面整備、道路、飛行場などの大規模公共事業がほとんどだったが、現在ではわずかである(下図 )。

環境影響評価手続き中の事業(右のその他は土地区画整理事業の面整備が2件、鉄道、飛行場、河川が各1件。環境省資料より作製(http://www.env.go.jp/policy/assess/3-2search/search.htm、http://www.env.go.jp/policy/assess/3-1procedure)  

 EIA手続き中の風力の件数は多いが、発電量では火力が多い。

 風力の発電量は2015年7月時点で既存と合わせても全国で10GW(ギガワット)程度といわれる (参考)。他方、首都圏だけで少なくとも5件の火力がEIA手続き中であり、そのうち3つは石炭火力である(下表)。

 表の石炭火力3事業の二酸化炭素(CO2)排出量は、風力発電によるCO2削減量約17GW分に相当する。風力発電の耐用年数は20年弱だが、新増設の火力発電は約40年動かすことになるだろう。これでは、日本の気候変動対策は進まない。

 風力は2011年11月に日本のEIA法対象事業に追加された。EIAの第1種事業対象の規模要件は火力が150MW(メガワット)以上であるのに対し、風力は10MW以上(現在の大型風車約3基に相当)である (参考)。環境省 によると、火力事業は規模要件をわずかに下回る規模の事業計画が多数ある(参考)。火力はCO2排出だけでなく、原子力と同様に

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