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懸念される世界遺産に向けたやんばるの現地調査

辺野古・高江の自然破壊を、IUCNは今夏、どう評価するのだろうか

桜井国俊 沖縄大学名誉教授、沖縄環境ネットワーク世話人

 日本政府が、豊かな生物多様性があるとして奄美・琉球の世界自然遺産登録を目指し、2月1日にユネスコ世界遺産委員会に推薦書を提出したことは、すでに書いた。(2017年4月19日付WEBRONZA「返還されない北部訓練場の自然の価値」)これを受け、今夏、ユネスコの諮問機関のIUCN(国際自然保護連合)による現地調査がある。

 日本政府が世界自然遺産候補として推薦したやんばるの森は、昨年9月15日に環境省がやんばる国立公園として指定した地域だが、高江集落を取り囲む形で6カ所のヘリパッドが建設された米軍北部訓練場に隣接しており、オスプレイが飛び交う環境が果たして世界自然遺産にふさわしいのか、という根本的な問題がある。

 危惧は既に現実のものとなりつつある。6カ所のヘリパッドのうち2014年に完成したN―4地区の2カ所のヘリパッドでは沖縄にはない植物のクズが見つかり、突貫工事で昨年12月に完成させたと沖縄防衛局が主張しているN―1(2カ所)、G、H地区(欠陥工事で早くも補修が必要となっている)ではメキシコ原産の外来植物ヤナギバルイラソウが見つかっている。

 世界自然遺産候補地は辺野古からやや離れているとはいえ、大量の土砂搬入はやんばるの森に取り返しのつかない影響を及ぼす恐れがある。

外来生物侵入防止を重視するIUCN

 島嶼地域における生物多様性保全において、事前審査に当たるIUCNが特に重視しているのが外来生物の侵入防止対策である。

 昨年9月にIUCNの4年に1回の総会(第6回総会)がハワイ・ホノルルで開かれたが、それに先立つ8月30日に、日米の六つの環境NGO団体が共同提出し、日米両政府とIUCNに沖縄本島の外来生物対策を求めた勧告案は、賛成多数で採択されている。これは、具体的には、辺野古埋め立て用に県外から搬入される1700万立方米の土砂について外来生物対策を求めたものである。日米両政府は棄権したが、この勧告案採択が持つ意味は重い。

 世界自然遺産の登録対象となっているやんばるの森は、埋め立て対象となっている辺野古・大浦湾の海からわずか20㎞しか離れていないからである。

 辺野古・高江問題についてのIUCNの勧告はこれが初めてではない。2000年のヨルダン・アンマンにおける第2回総会、2004年のタイ・バンコクにおける第3回総会、2008年のスペイン・バルセロナにおける第4回総会において、IUCNはやんばるの森や辺野古・大浦湾の海に生息するジュゴン、ノグチゲラ、ヤンバルクイナの保全などを求める勧告を採択してきた。

 日米両政府は一連の勧告を無視してきたが、

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