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寺島実郎の視座 「普天間」は終わっていない(1) ~編集長インタビュー~

一色清

一色清

 日本の進むべき方向について、歴史的な認識を踏まえ積極的に発言している寺島実郎・日本総合研究所理事長への特別インタビュー。2回目は普天間基地問題と日米関係について語っていただきました。もう終盤戦に入った選挙戦の最中、前首相が退陣に追い込まれた大きな要因となったこの問題は、どう語られてきたのでしょうか。主要な論点になっていたでしょうか。

 ――鳩山前首相が辞任に追い込まれた主要な要因のひとつが、沖縄県の米軍普天間基地問題でした。菅首相は米国との合意を重視する姿勢を改めて打ち出し、日米関係の重要性をアピールすることに必死です。戦後の日本が抱え続けているこの基地問題、そして日米問題をどのように考えるべきなのでしょうか。

 「私は鳩山政権、特に普天間をめぐる外交の失敗は何だったのかと、じっくり考えてみると、結局は普天間問題なるものを沖縄の負担軽減問題だという風に認識して立ち向かっていったことの限界にあると思う」

 「鳩山由紀夫という人物は、僕は長い付き合いだからわかるけれど、本当に思いやりのある、ある意味では善人。いい人なんですよ。であるがゆえに、沖縄に日本における米軍基地の7割以上が集中していることに対して、途方もない不条理感をもっているし、同情もしている。センチメントとしてその問題を何とかしなければいけないと思い込む生真面目さがあった。そして、彼自身が発信してしまった『少なくとも県外』という言葉に対して誠実でありたいというくらいの気持ちはあるわけで、ある意味では情の人なんですよ」

 「『優しさ』とか『思いやり』とか『情』とかというものが、政治の世界でもつ意味を、見せつけるような展開でしたが、この問題は、目の前にある普天間基地なるものの移転先をめぐって、どこかに落とし所が見つかって、うまくジグソーパズルのはめ込み先が見つかったから、「めでたし、めでたし」などという話ではない。まず、この問題の本質はあくまでも、向き合うべきエネルギーの先が、米国という大きな存在であるということ。また、米軍基地の問題、さらには今後の日米同盟のあり方について、いかなる方向感を持って立ち向かって行くかというところが最大のポイントになるのです」

 「そして、そうした本質を見据えた構想力とか政策論とかにおいて、しっかりした方向感を示した上で、目の前にある普天間問題は、とりあえずこういう形に持っていきたいんだ、という説明がないと、沖縄の人も納得しないし、アメリカもいったいどこを目指して議論してきているのかと苛立つことになる」

 「要するに、鳩山前首相は、自分の言葉が国民に伝わらなかったという言い方をして辞めていったけど、それは伝わらなかったのではなく、伝えていなかったのではないか。多分、最後の辞任を表明した記者会見の時に初めて、彼の本音らしきものを吐露したのだと思います。今後10年20年たっても、基地の在り方がこのままでいいとはとても思えない、ということを含めて、要するに、彼が政権として目指そうとする方向について、最後の瞬間に語ったということ。本質をなんら語らないまま、なんとか県外に沖縄の負担を軽減するために移したいという、こういう枠組みの中でこの問題を処理しようとしたことの限界が露呈してしまった。しかし、彼をしてそうせざるを得なくさせた制約といいますか、彼をはがいじめにしてしまう様なエネルギーっていうのがいったいどこからどういう形で存在したのかっていうことが、非常に重要だと思うんですよ」

 ――それはどのような制約なのでしょうか。

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