武田洋子
2010年07月28日
第一の理由は、財政懸念がギリシャ固有の問題ではないからである。
ユーロ加盟国では、程度の差こそあれ、ポルトガル、アイルランド、イタリア、スペインも大幅な財政赤字や債務残高を抱え、かつ経常赤字国でもある。最近は、ギリシャも含め、これら5カ国の国名の頭文字をとり、「PIIGS」と呼称されることが多い。ギリシャ一国のGDPはユーロ加盟16カ国全体の約3%に過ぎないが、PIIGSのGDP合計は全体の約35%にも達する。
二つ目の理由は、PIIGSのリスクが欧州金融システム内に集中していることである。
国際決済銀行(BIS)公表のデータに基づき、2009年12月時点での主要国金融機関のPIIGS向け与信残高をみると、残高がもっとも大きいのはフランスで約9000億ドル、次いでドイツの約7000億ドル、英国の約4000億ドル、オランダの約2400億ドルと続く。
三つ目の理由として挙げられるのが、ユーロ加盟国の政治的不協和音の露呈である。
ギリシャ危機が表面化した当初、ドイツ政府は国内世論への配慮などからギリシャ支援を躊躇するなど、各国間の調整は難航した。市場からのプレッシャーが高まる中、最終的には総額7500億ユーロの緊急融資制度の創設に至ったが、対応が後手に回った感は否めない。
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