小原篤次
2010年08月09日
援助プロジェクトでは、(1)案件発掘(2)計画立案(3)承認(4)実施(5)評価の5つであり、年金運用では、(1)運用計画(2)運用開始(3)評価の3つとなる。
両者に共通するのは、実施されたものは、評価されて、実施段階や、次年度のプロジェクトや年金運用にフィードバックしなければならない。プロジェクト・サイクルである。
政策評価のサイクルを具体的に考えてみよう。
開発援助は、途上国政府が、財政不足を日本など海外からの援助で補うものだ。例えば、人口増加率が高いアフリカなどで学校校舎の建設が必要となる。教育支援に、地震や津波など天災の被害の視点を加えれば、緊急性の高い援助案件になりうる。途上国政府が案件を直接探す場合もあれば、援助する側や両国政府に詳しいコンサルタント、NGOが、アイデアを提供し、案件発掘や、計画立案に関わることもある。
そして、プロジェクトが承認され、学校校舎の測量、資材搬入、基礎工事が始まる。
しかし、学校校舎は、天災被害を優先し耐久性を高めると、コストが高くなり、建設できる校舎が限られる。すると、低コストで新設する学校校舎の数を増やすべきだという批判も出てくる。
一方、国民が受け取る年金運用で言えば、例えば、近い将来、欧州中央銀行、中国人民銀行など中央銀行の政策金利が上昇すると考えれば、国債の市場価格が下落する可能性がある。しかし、運用担当者(ファンドマネジャー)が国債のウエイトを減らす、つまり国債を売ることを躊躇し、結果的に政策金利が上昇し、国債の価格が下落すれば、運用成績が低下する。運用成績は、四半期や年度ごとに公表され、当初の運用目標や、他の運用機関の実績を下回れば、批判にさらされる。
援助された学校校舎が建設され、年金運用が成績を公表することで、評価がなされる。批判や反対意見も合わせて、次の学校校舎建設や年金運用に生かされていく。このように、政策の実施には、当初の計画や前年度の政策の修正や見直しが不可欠だ。政策変更に躊躇する必要はないと思う。
ただし、民主党の政権公約であれ、それまでの政権の政策との比較で考察されなければならない。
以上は、極めて常識的な議論だろう。
では、先進国の日本で、なぜ、政策評価やフィードバックが、定着しないのか。
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