小此木潔
2010年08月19日
残念ながら菅首相が参院選で語った消費増税の論理では、「増税の使い方を間違えて景気を失速させる」可能性が大きい。そのため、国民の不安をあおり、政治的にも経済的にも通らない。選挙結果が映し出しているのは、単なる説明不足ではなく、首相の「消費増税の論理」そのものの甘さ、欠陥だと考えて出直すべきである。
消費税問題は、マクロ経済政策と財政再建、社会保障・人材育成といった連立方程式の解として解かねばならないのに、首相は「財政再建」という一本の方程式にこだわりすぎているように見える。菅直人首相の妻である菅伸子さんの著書「あなたが総理になって、いったい日本の何が変わるの」(幻冬舎新書)からも、そうした危うさがうかがえる。
ひとことでいえば、首相は増税を財政再建のためだと単純に考えているふしがあるのだ。だとすれば、そうした増税は失敗するとしか思えない。そうした偏りを是正し、「強い経済、強い財政、強い社会保障」の一体的実現、生活第一、雇用創出という首相本来の「第3の道」路線を貫けば、成功できるだろう。財政再建と成長の両立、それを雇用創出、社会保障や教育の充実と結びつけ調和する道を示してこそ、消費増税は意味があるし、政策として、また政治路線として成功する。そういう立体的構造を経済が不得手の首相は残念なことに理解できていないのではあるまいか。
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