浜矩子
2010年08月31日
日銀の追加金融緩和策が発表された。
その内容をどう評価するかを考える前に、まず、確認と整理を要する点が二つあると思う。
第一に、為替関係の現状を「円高」と表現するのは、基本的に的外れだと思う。円高ではない。これはドル安だ。今我々が目の当たりにしているのは、ドルに対する長年にわたる過大評価の歴史的大修正場面である。
第二に、中央銀行は、政府の景気対策機関ではない。中央銀行は通貨価値の番人である。この理解があればこそ、多くの国々において中央銀行の政治と政府からの独立性を制度的に明記している。
現状を歴史の必然がもたらすドル安ととらえれば、それに過度に抗っても、基本的には始まらない。どうしてもズリ落ちて来てしまうものを押し上げ戻すことに必死になるのは、本質的なところで徒労である。
さりとて、あまりにも急激に為替関係の水準訂正が進むことの衝撃は甚大なので、ドルの相場崩落を完全に放置するのは、政策的に無責任だ。ここが難しいところなのだが、ここを下手に円売りドル買いの為替介入などでしのごうとすれば、結局はいずれ紙切れになるかもしれないドルを日本国政府が手元にため込むことになる。日銀の追加対策が奏功しなければ、次の一手は政府による介入実施の決断だという。だが、そこを考えるに当たっては、政府は上記の点を重々銘すべしだ。
中央銀行の独立性という観点からいえば、
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