1975年入社、主に経済記者として財務省、経産省、日銀などを取材。デスクを経て99年から編集委員。「大蔵支配」、「経済漂流」、「分裂にっぽん」、「公貧社会」などの連載企画を担当。近著に「失われた20年」(岩波書店、共編著)など。本紙では「補助線」、「記者有論」などのコラムを執筆。1951年生。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
西井泰之
米国の「過剰消費」が是正される過程で落ち込んだ需要を何で埋め、「世界不況」から抜け出すのか。財政出動による内需拡大が財政赤字の膨張で限界にきた中で、どの国も輸出頼み、他国の需要で自国の景気回復を狙う思惑から金融緩和による為替引き下げ競争の様相だ。
だが展望はあるのか。
総額30兆円の資金供給を決めた8月30日の日銀臨時会合後の記者会見。白川総裁が思わず口調を強めた場面があった。
「(金融政策で)日米が対立しているわけではない。世界経済が厳しい状況にあるなかで、各国がゼロサムゲームのように政策を考えることは好ましくない」。
FRB(米連邦準備制度理事会)が緩和することでドル安円高に振れ、日銀が緩和すればドル高円安に振れる「対立」になっている点を指摘されてのことだった。
今回もバーナンキ・FRB議長が、雇用や住宅販売などの足元の経済の弱さに追加金融緩和の可能性を示唆、ドル安が進むと、日銀があわてて追加金融緩和で円高阻止をめざす流れに、市場は為替引き下げ競争の臭いを感じ取っている。
「先進国の自国通貨安政策の椅子取りゲームで最初に椅子をとったのが米国だった」と、RBS証券の西岡純子・チーフエコノミストはいう。
論座ではこんな記事も人気です。もう読みましたか?