武田洋子(たけだ・ようこ) 三菱総合研究所チーフエコノミスト
【退任】三菱総合研究所 政策経済・研究センター チーフエコノミスト。東京都生まれ。ジョージタウン大学公共政策大学院修士課程修了。94年に日本銀行入行後、海外経済の分析、外貨準備の運用、内外金融市場のモニタリング・分析、外国為替市場における平衡操作担当などを歴任。09年4月より現職。専門は国際金融、マクロ経済、公共政策。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
武田洋子
一国の総理大臣にとって、雇用を増やすことは、実はお安いご用だ。
失業者全員を公共事業に従事させ、給与全額を税によって支払えばよい。
ケインズがいみじくも言ったように「穴を掘ってただ埋める」事業に失業者を投入し、政府が給与を支払えばよい。「公共事業」は思いのままだ。つまり誰でも分かることだが、単に雇用を増やしたいだけなら、失業者全員を公務員にすればよい。
しかし、それが国民の期待に応えることになのか。税金で給与をもらう公務員を増やすということは、国民にとって自分の財布からお金を取り出し、自分で給与をもらった「気持ちになる」ことを意味している。それでは「雇用の問題」が解決したことにはならない。
つまり、雇用を生み出すというこというは、いかにして利益が上がるビジネス・チャンスを民間部門で創り出していくか、ということに他ならない。企業が収益機会をみつけビジネスを進めていく中で、自ら望んで雇用を増やす――少なくとも減らさない経済状況を創り出すために、政治と政策に何ができるか、それが問われている。
常識的に考えれば分かることだが、「商売繁盛」こそ、雇用拡大の源だ。
もちろん、商売が繁盛しても「私腹を肥やす」だけで従業員にお金を回さない悪徳商人もいるかも知れないが、それはまた別の問題だ。商売が繁盛していないのに、従業員を増やしたり給料を上げたりできるわけがない。
ではどうすれば商売が繁盛するか。それが分かっているのならば、政治家や役人も自分の資金で儲かる商売をしているはずだ。だから、政府に「税金で」商売をやらせてはいけない。
発想を逆転させる必要がある。
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