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格安航空会社のすごさと危うさ

一色清

一色清

 「バスなんだよ、これは」。全日空の幹部は、格安航空会社への参入を発表した日、私にこう強調しました。

 確かに、全日空が立ち上げようとしている格安航空会社は、関西空港ー成田空港間を5000円の料金にしたいとしていて、東京ー大阪間の夜間高速バスの料金なみ、あるいはそれより安いくらいです。バスという意味は、安い値段で気軽に乗れるということのほか、「サービスなどは期待しないで下さいよ、あくまでA地点からB地点まで移動するための手段ですよ」という航空機観の転換を含んでいます。

 では、どうやってそんな安い値段で利益の出る仕組みにするのでしょうか。世界の格安航空業界には、大きく言えば、3つの仕組みがあります。

 一つは、飛行機にもっと働いてもらうことです。

 今、日本の大手航空会社の飛行機が空を飛んでいる時間は、1日のうち7時間から8時間程度です。格安航空会社では、これを1日、12時間から13時間にして、効率を上げます。飛行機に長く空にいてもらうためには、地上にいる時間を短くすればいいわけです。

 でも、羽田空港のような込んだ空港を使う場合、離発着の時間を自由に決めることは出来ません。たっぷりとした待ち時間があります。また、お客さんへのサービスを考えますと、機内の清掃やフライト中のサービスのための準備などに時間をかけざるを得ません。こうして、飛行機は空港で1時間も2時間も滞在することになり、一日に7、8時間しか飛べなくなっています。

 しかし、空いていて24時間使える空港なら、いつでも離陸しようと思えば、離陸できます。お客さんへのサービスをなくせば、準備にかかる時間も減ります。こうして、着陸してから30分くらいで離陸できれば、一日に12、3時間飛ぶ設計図が描けます。つまり、格安航空会社の拠点になる空港は空いていて24時間使える空港であることが条件になります。全日空が、格安航空会社の拠点を関西空港に決めたのは、関西空港がそうした空港であるためです。

 もう一つは、今より乗れるお客さんを増やすことです。

 格安航空会社を使おうとするお客さんは、もともと快適性より安さを求めているわけですから、前の席との間隔が狭くてもその分安ければ我慢するはずだというわけです。このお客さんをたくさん乗せる発想の極端なものが、立ち乗りチケットの発売です。

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