1975年入社、主に経済記者として財務省、経産省、日銀などを取材。デスクを経て99年から編集委員。「大蔵支配」、「経済漂流」、「分裂にっぽん」、「公貧社会」などの連載企画を担当。近著に「失われた20年」(岩波書店、共編著)など。本紙では「補助線」、「記者有論」などのコラムを執筆。1951年生。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
西井泰之
政府の成長戦略や経済界で法人税引き下げ論が高まる。この2、3年でもドイツ(25%から15%)や英国(30%から28%)、中国(33%から25%)、韓国(25%から22%)、シンガポール(20%から17%)が相次いで引き下げた。外資誘致や自国企業支援の「税のダンピング競争」の様相だ。
経済界からは「このままでは企業は日本から出ていかざるを得ない」と脅すような言葉が出てくる。だが法人税を下げたところで「空洞化」は止まるのか。企業の懐が楽になったとして、それで国民経済は強くなるのか。
三重県亀山市。モノ作りの「国内回帰」の象徴だったシャープの工場からこのほど液晶パネルの前工程の生産設備の搬出が完了。また一つ、がらんどうの工場建屋が増えた。県から受けてきた企業誘致の補助金まで一部を返還し、向かった先は中国・南京市。
8月中旬に訪れた、シャープの設備売却先の南京中電熊猫信息産業集団(CECパンダ)の工場はすでに工場増設も終わっていた。
すぐそばにシャープの現地法人の工場があった。CECパンダからパネルの供給を受け、中国国内向けにの液晶テレビに組み込むという。各国の市場にあわせた製品を現地で生産する「地産地消」戦略の一環だ。直近でもパナソニックが尼崎工場のプラズマテレビ用パネルの生産設備の上海への移設を発表するなど、法人税とは関係なく企業の現地化が再び加速する。
輸出企業を中心に約300社に「海外移転の理由」を聞いた経産省の調査(2010年4月)によると、