安井孝之
2010年09月30日
政府は5%程度の法人税減税を新成長戦略の柱として考えているようだ。日本の企業の競争力を引き上げるとともに、外資系企業を呼び込み、あるいは海外展開を考えている日本企業に思いとどまらせようとしているわけだが、効果は小さいとみる。減税は企業にとってはプラスに違いなく、企業の成長を後押しはするが、それが日本の経済の再生に結びつくかどうかははなはだ疑問である。
法人税減税については6月24日付のWEBRONNZAで、減税をしても日本の電機メーカーから「iPad」は生まれない、と書いた。その際には、世界の優良企業の売上高に占める税負担に比べ日本企業は決して高くないことを指摘し、税負担が重いから成長力がないのではなくて、高収益を生み出す知恵とビジネスモデルがないから成長力がない、と主張した。
日本企業の不振は税率が高いためではない。低くしたからといって急に知恵が生まれるわけでもない。日本の高収益企業(利益が大きく、税金も多く支払っている)は別として、多くの企業は税率が下がっても、余り効用はない。そんな効用のために財政赤字の下で1兆円もかけて、減税をする政策判断が適切かははなはだ疑問である。
こうした見方に対して、企業経営者や経済産業省の担当者は「痛い指摘ではあるが、問題はこのままでは工場が海外移転することや、外資系企業が日本に進出してくれないことだ」と法人税減税の必要性を訴えるが、これも本当だろうか。
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