城繁幸
2010年10月05日
2005年より、日本は人口減少社会に突入してしまった。
「してしまった」と書いたのは、こうなることは出生率が2.0を割った70年代から分かり切っていたにもかかわらず、日本はなんら有効な対応をせず、それが到来するのを指をくわえて眺めていたからだ。
抜本的対策は明らかで、「男性新卒総合職」を柱とする終身雇用制度にメスをいれ、労働市場の流動化を図る以外にはない。
それによって女性の社会進出を促し、子育てと就労がトレードオフとなっている現状を打破するわけだ。ちなみに、90年代以降に出生率の回復した北欧やフランスといった国は、すべてこのアプローチに従っている。
そういうことにまったく手をつけようともせずに、ひたすら高齢者向けにバラマキ続けている日本の政治にはあきれ果てているが、過ぎてしまったものは仕方がない。とりあえず、減ってしまったものはもうしょうがないので、雇用及び社会保障だけは、人口減社会に対応したものに大至急作り替えるべきである。
まず雇用については、上記のように徹底的に流動性を高めるべきだ。従来の終身雇用型というのは、労働条件の不利益変更も解雇も認められておらず、要するに「前年度に比べて増えた原資を皆で分配しろ」というものだった。
人口減社会になれば基本的にゼロ成長を基準とすべきだから、これでは原資が増えないことになる(非正規雇用の拡大はこれを受けたものだ)。よって、他の先進国同様、「人件費の原資全体を再分配する」というシステムに作り替える必要がある。従って、小泉政権時に掲げられた労働ビッグバンの推進が望ましい。
社会保障については、多くの経済学者が指摘するように、人口増を前提とした賦課方式ベースのものから、事前積立方式への移行が必須である。
現状、60歳以上と将来世代の受益と負担の格差は、1億2300万円にのぼる(一橋大・小黒准教授試算)。
さらにいえば、(仮に事前積立方式とした場合に必要だった積立金額から現状の積立金額を引いた)社会保障の暗黙の債務は1150兆円にも上り、国の長期債務1000兆円と合わせれば、
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