山下一仁
2010年10月11日
今年度から導入される「戸別所得補償政策」は、米生産がコスト割れしているので、コストと米価の差10アール当たり1万5千円を農家に支払うというものだ。
しかし、コスト割れしているのなら、これまで農家は生産を継続できなかったはずだ。コストが米価より高い理由は、このコストが、肥料、農薬など実際にかかった経費に、勤労者には所得に当たる労働費を農水省が計算して加えた架空・机上のコストだからである。
農水省の統計でも販売収入から経費を引いた米農家の農業所得は、平均では39万円、7~10ha規模の農家では440万円、20ha以上の規模では1200万円となるなど、実際にはコスト割れなどしていない。
日本と同様、かつては高い価格で農家を保護していたEUも、ウルグァイ・ラウンド交渉を乗り切るために価格を下げて農家への直接支払いという財政による補てんに切り替えた。消費者負担から財政による農家保護への転換である。
しかし、農家が今回の戸別所得補償を受けるためには、生産を減少して高い米価を維持するという減反へ参加することが条件である。高い米価水準は下がらない。これまでも農家を減反に参加させるため、毎年2千億円、累計で7兆円に上る補助金が支出されてきた。今回これに3,371億円という戸別所得補償を加えるので、減反補助金と合わせると5,618億円となる。
高い米価という消費者負担に納税者負担が加重されるのだ。価格が下がらないのでWTOやFTAなどの貿易自由化交渉にも対応できない。
米価が低下すると戸別所得補償は増額される。逆に米価が上がっても、戸別所得補償は減額されない。つまり、
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください