大鹿靖明(おおしか・やすあき) 朝日新聞経済部記者
1965年、東京生まれ。早稲田大政治経済学部卒。88年、朝日新聞社入社。アエラ編集部などを経て現在、経済部記者。著書に第34回講談社ノンフィクション賞を受賞した『メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故』を始め、『ヒルズ黙示録 検証・ライブドア』、『ヒルズ黙示録・最終章』、『堕ちた翼 ドキュメントJAL倒産』、『ジャーナリズムの現場から』がある。近著に『東芝の悲劇』。キング・クリムゾンに強い影響を受ける。
倒産して再建中の日本航空(JAL)が国内線のファーストクラスを「無料」でばらまいていることが明らかになった。
JALはグループ社員4万人と1万4000人強のOBに「JALグループファミリークーポン」と称して国内線が半額になる優待券をばらまいていることも、AERA誌上で明らかになっている(AERA10月4日号)。倒産しても仰天のコスト感覚である。
JALがばらまいているのは、「国内線ファーストクラス券引換証」なるものだ。普通運賃の値段だけで国内線のファーストクラスが乗れるので、ファーストクラス代金(8000円)がタダになる。国内線の幹線である東京-札幌、東京-福岡などで配っている。この「国内線ファーストクラス券引換証」とは、JALの説明によると、大口利用者である大企業むけに、いわば試乗券として配っているのだという。あくまでも販促という位置づけだという。
これをそのまま受け止められないのが、ライバルの全日本空輸(ANA)である。
「8000円分の減収覚悟の上、立派なお試し券を印刷して、丁寧な専用封筒をあしらい、説明書を添えての配布ですから、相当のコストがかかっているのではないでしょうか」と、ANAの担当者はJALの動きを怪しむ。倒産したうえ、放漫経営の惨状が頻繁に報道されることによるイメージダウンから、国内線のJAL離れは進んでいる。ANAに優良顧客が流れることを恐れ、顧客の囲い込みのための、なりふり構わぬサービスとしかANAには見えない。
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