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 先週、日本中は鈴木章さんや根岸栄一さんのノーベル化学賞ダブル受賞に沸いていた。また、お二人の先生方も、それぞれ日本の若者に対して熱いメッセージを送っておられた。特にアメリカ在住50年になろうとしている根岸さんが、若者に対して積極的な海外武者修行を呼びかけた。

 しかしながら、現実には日本の若者の内向きの姿勢が顕著になっているという調査結果もある。日本の国内市場が飽和し、企業の海外進出や海外での業績は重要性が増しているいま、日本の若者はあたかも潮流に逆行しているように見える。しかし、それは今始まった現象なのだろうか? その底流にあるものは何だろうか?

 実は、今までの日本人の海外行きも、その内訳が他の国と大きく違っていた。というのも、学生時代の海外留学が圧倒的に少ないのだ。アメリカの大学で見られる日本人学生は、その多くが企業が派遣した留学生だった。学費を会社が負担し、給料をもらいながら勉強するのでもちろん優雅な生活が送れるのだが、その分だけ、海外のものをより多く、深く吸収するための貪欲さが足りないのは当然かもしれない。また、会社の縛りがある以上、若くて自由の身である学生時代の留学生よりも視野が狭くなるのが常だろう。

 自腹で行く留学生も含めて、彼らは卒業してすぐ日本に帰ってくるから、根岸さんのような現地に根を下ろすタイプは非常に稀だ。日本に帰ってきても結局、日本企業に就職したり復職したりするケースが大半であり、せっかくの海外経験は、企業組織の中で十分に生かされないまま、海外留学の「烙印」が薄れていくことも多い。結局、海外に行っても、本格的な現地理解もネットワークづくりもままならずに国内に帰ってきて、その薄い知識や経験でさえも日本企業の慣行の中で再び「日本」に同化されてしまうのだ。それでも、日本や日本企業に元気があるときは、形式上の「海外経験」を後押しできたが、今になって家計も企業もその余裕がなくなり始めて、海外に行く若者がますます少なくなった。つまり、今の状況は今に起こった現象ではなく、昔からある事態の延長線でしかない。

 その底流にあるのは、大学や企業なども含めた日本社会の全般的な「国内重視」傾向にあると思われる。硬直した入学制度や入社制度など技術的な要因もあるが、根本的な「海外経験」の評価の低さが主な原因なのだ。ビジネスマンが長期間、国内を留守にすれば昇進しにくくなる人事の構造は、欧米先進国どころか新興国でもありえない。もちろん、海外の経験やネットワークが十分にないまま日本のビジネスマンが海外に出て行ってもうまくいかないから、ますます海外軽視の傾向を強めるという悪循環が生まれる。これは、日本企業の中で真の「グローバル企業」と呼べる存在がごくわずかしかない、という現状につながっている。

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筆者

肖宇生

肖宇生(しょう・うせい) フロンティア・マネジメント株式会社事業開発部マネージング・ディレクター

【退任】フロンティア・マネジメント株式会社事業開発部マネージング・ディレクター。1996年大阪大学経済学部、2001年一橋大学大学院経済学研究科卒業(経済学修士)。精密機器メーカーで中国携帯市場向けマーケティングを担当後、国内シンクタンクで中国市場のコンサルティング、ファンド会社で中国市場のプライベート・エクイティ投資に従事。日本総合研究所創発戦略センター主任研究員を経て、2011年4月より現職。

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