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北方領土とシェールガス革命 

原真人

 ロシアのメドべージェフ大統領が北方領土の国後島を電撃訪問した。訪問理由としては、2012年の大統領選に向けて指導者としての強さを見せる必要があったこと、日本の民主党政権に国後島・択捉島は返さないという意思を鮮明にして妥協を引き出す狙いがあったことなどが指摘されている。いずれも、もっともだが、私はエネルギー大国に迫る一種の危機意識も背景にあったのではないかと考えている。ロシアにとっての「危機」とは、現在進行形の「シェールガス革命」のことである。

 シェールガスとは、深い岩盤の隙間に薄く広く存在する天然ガスである。世界のあちこちに相当な量がありながら掘り出すのが難しく、これまでは資源として意識されてこなかった。ところが米国でこれを産出する技術が考案され、またたくまに実用化されたのだ。この結果、米国では天然ガス産出量が急増した。

 当然、世界のガス価格は急落した。最も深刻な打撃を受けたのが世界最大の天然ガス資源国・ロシアである。

 天然ガスは温室効果ガス排出量が原油より少ない。地球温暖化問題を背景に今後の有力なエネルギー源として期待されている。そうした思惑もあって世界のガス需要が増えているので、ついこの前までは供給国が潤う「売り手市場」だった。ロシアが中心となり、ガス産出国のイランやカタールとともに「天然ガス版OPEC」を作る構想が取り沙汰されたほどだ。

 これほど魅力的な資源だから「政治カード」としても使えた。ロシアが、欧州連合(EU)側になびくウクライナを牽制するために同国向けのガス供給を止めたのは記憶に新しい。

 その光景をガラッと変えてしまったのがシェールガス革命だ。

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