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 先日、内部の何者かの手で、日本の巡視船と中国漁船の衝突ビデオがネット上に流出した。その後、海保の保安官が自らの行為を認めたとされるが、これをきっかけに、両国のお互いの嫌悪感が一気にヒートアップし、落ち着きつつあった尖閣諸島紛争が再び盛り上がりを見せている。アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を控える日中は、またも難しい問題に直面している。拡散する映像を見た日本国内の反応は中国非難の一色だが、筆者としては、ちょっと違和感を感じた。その一方で、中国がこの状況をどう捉えているのか、という視点を欠いている限り、危険水域に入っている日中関係は回復に向かわないのではないか、とも感じている。

 まず、編集されたビデオ内容については、そのまま受け取れないという見方が大半だ。理由はまず、日本の巡視船と中国漁船の性能上の違いだ。速度や排水量など、どれをとっても両者の差が大きすぎる。たとえ中国漁船が衝突を狙っても巡視船が意図的にぶつけられるようにしなければ衝突できないのだ。また、専門家の分析では、映像を見る限り、特に1回目の衝突は明らかに巡視船が漁船を追い越して前方を横切ったときに衝突したものと見られる。確かに、日本側のビデオでは全体をとらえた場面がなく、特に1回目の衝突については、止まっている巡視船に中国漁船が真正面からぶつけてきたように編集されているように見える。

 これは、冷静に考えればありえない話だ。ビデオ映像の流出によって、今まで半信半疑だった中国人の間にも、今回の衝突が日本側から仕掛けられたものだという認識が広がっている。民間では、未編集のビデオを全部公開すべきという意見も出ているほどだ。

 一方で、ビデオ流出を招いた日本政府に対する、なんともいえない気持ちも充満している。意図的に関与していないとすれば、その危機管理能力は驚くほど低下しているわけで、「大丈夫か?」とかえって心配してしまう空気がある一方、意図的に流している「自作自演」ではないかという疑念と憤懣の気持ちもある。

 しかしながら、中国国内の主要な論調は、尖閣諸島問題をきっかけに始まった日中関係の冷え込みではなく、日本が主導した日米による対中包囲網の構築への対抗心が支配的だ。

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筆者

肖宇生

肖宇生(しょう・うせい) フロンティア・マネジメント株式会社事業開発部マネージング・ディレクター

【退任】フロンティア・マネジメント株式会社事業開発部マネージング・ディレクター。1996年大阪大学経済学部、2001年一橋大学大学院経済学研究科卒業(経済学修士)。精密機器メーカーで中国携帯市場向けマーケティングを担当後、国内シンクタンクで中国市場のコンサルティング、ファンド会社で中国市場のプライベート・エクイティ投資に従事。日本総合研究所創発戦略センター主任研究員を経て、2011年4月より現職。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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