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リチウムイオン電池一辺倒でいいのか!? 電気自動車の「もう一つの未来」を語ろう

堀洋一(東京大学大学院新領域創成科学研究科教授)/聞き手:一色清

 次に、(2)の「ちょこちょこ充電」とは、大容量の「電気二重層キャパシタ」(capacitor、以下キャパシタ)、いわゆるコンデンサの蓄電技術によって可能となる蓄電方法です。コンデンサといえば、家電製品やパソコンの基板にも多数使われている部品ですね。もともとコンデンサは、蓄電できる容量(エネルギー密度)が従来の電池と比べてきわめて小さかったのですが、20世紀後半になって、腕時計や電卓からデジタルカメラや携帯電話まで、小型の電子機器中心に用途が広がってきました。

 キャパシタ(コンデンサ)は、1879年にドイツの化学者ヘルマン・フォン・ヘルムホルツによって発見された「電気二重層」現象の原理を用いた蓄電器で、プラスとマイナスの電極が対になっている部分に電荷、すなわち電気エネルギーを蓄えることができます。ふつうの電池と違って、電気を電気のまま、つまりエネルギーを化学反応で失うことなしに半永久的に充電や放電を繰り返すことが可能で、充電の所要時間も数十秒と非常に短くて済みます。

 そもそも電池の世界は、キャパシタのような「物理電池」ではなく「化学電池」と呼ばれるタイプが主流でした。私たちが日常生活で使っている電池のほとんどは、使い切りの乾電池(一次電池)も蓄電池(二次電池)も、後者の化学電池に分類されます。つまり物質の化学反応を使ってエネルギーを貯めたり放出したりするから、電力のロスも大きく寿命が短い。充電用の電池であっても、せいぜい1千~2千回で使用不可能になってしまいます。

 そもそも、今もてはやされているリチウムイオン電池も化学電池の一種で、少し前まで、すぐに燃えたりショートしたりしてしまうので、とても危険で実用化できそうもない技術とされていました。

 これまでは、キャパシタの大容量化が困難とされていたため、こうした化学電池のほうが普及していましたが、私たちは、一般家庭用の100ボルト、10~15アンペアのコンセントから「ちょこちょこ」充電できるような電力供給網が整備されれば、数キロ走るごとに充電を繰り返して何百キロも走り続けるような自動車社会が実現すると考えています。すでに、研究室段階では30秒の充電で20分以上走ることができる技術が実現しているので、後でご紹介しましょう。

 冒頭で触れた(3)の「ワイヤレス給電」技術も、ここ数年でブレークしそうです。

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