琴寄辰男
2010年11月17日
漁船衝突事件発生直後の9月14日、中国外務省で劉振民・外務次官補と会った丹羽宇一郎・駐中国大使はこう申し入れた。衝突事件を受けて、中国側は9月中旬に予定されていた東シナ海ガス田共同開発の条約締結交渉の延期を発表していた。
「領土問題を巡る意見の相違はともかく、『江戸の敵を長崎で討つ』ようなまねはやめてもらいたい」という丹羽大使の指摘は極めて真っ当だが、中国に効くかと言えば、おそらく効かないだろうと当時思った。実際、その後も、日中間の閣僚級以上の交流停止や上海万博への青年訪問団の受け入れ延期、レアアースの輸出制限など、衝突事件に関連しない案件をあえて関連づけた動きが中国側から相次いだ。
効かないと思った理由の1つは、中国政府の一体性だ。
中国政府の各部門にも、いわゆる「省益」はあり、いつも一枚岩ではない。例えば、人民元の切り上げを巡っては、物価安定に責任を持つ中国人民銀行(中央銀行)と、輸出企業を守る立場の商務省はしばしば政府内で異なる意見をぶつけ合ってきた。
だが、大きな問題で指導部の方針が決まった時、中国の巨大な官僚組織はいっせいにその方針に従って動き出す。
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