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通貨戦争の次は開発戦争という危うさ

浜矩子

浜矩子 同志社大学大学院教授(国際経済学)

 開発戦争。こんな言葉が、何かにつけて頭に浮かんでしまう今日この頃だ。資源開発を巡る争奪戦。大型のインフラ開発プロジェクトに照準を当てた受注合戦。グローバル・ジャングルの中の新たなフロンティアを我が物にせんとて、国々が先陣争いでしのぎを削っている。

 その有様に関する報道に接するにつけ、開発戦争のイメージが深まる。いまや21世紀だというのに、このままでは20世紀初頭に逆戻りではないか。我々は第一次世界大戦前夜の植民地争奪の場面にタイムスリップしていくのか。そんなことを心配する心境になってしまう。

 政府の「新成長戦略」によれば、日本は「インフラ大国としての地位を確立」するべく、「2020年までに19.7兆円の市場規模」に到達することを目指すのだそうである。この方針を受けて、「原子力発電を含むエネルギー、水関連、高速鉄道などをインフラ輸出の重要事業と見なす」のだという。

 特に原発建設の受注には力を入れている模様だ。UAEでの案件を韓国に奪われたこともあって、急遽、官民一体の体制を組んだ。それが奏功したとみえて、ベトナムでは受注に漕ぎつけた。こうした展開を受けて官民総動員スタイルが、ますます開発戦争の最前線に躍り出ていくことになりそうだ。

 「オール・ジャパン」とか、「戦略的対応」とか、「国策」とか、「国益」とか。何やら威勢がいいというか、きな臭いというか。何とも気掛かりな言葉がさかんに使われるようになっている。政治家によるトップ・セールスを無暗に提唱する言い方も声高になっている。これで本当にいいのか。

 原発については、維持・補修に関わる安全性確保などの観点から、海外案件の受注を通じた技術力の保持が欠かせないのだという。それはそうなのだろうとも思うが、

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