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米国による超金融緩和政策は間違いなのか?

武田洋子

武田洋子 三菱総合研究所チーフエコノミスト

 本年夏以降、米国経済の先行きの不透明感が強まる中、米連邦準備理事会(FRB)は再び金融緩和に向けて動き始めた。8月10日には、FRBがリーマンショック以降、本年3月まで購入してきたエイジェンシー債やモーゲージ担保証券(MBS)の償還資金を国債の再投資にあてる措置を決定、さらに11月3日には、6,000億ドルの米国債の購入を発表し量的緩和政策を再開した。

 この2つの政策決定の間、市場ではFRBによる追加緩和が強く期待され、債券市場では米長期金利が低下、為替市場ではドルが全面安となった。わが国でも、10月5日に日本銀行が包括的な金融緩和に踏み切ったが(10月6日掲載「「包括緩和」に打って出た日銀、次は政府の出番」を参照)、円高は10月末にかけて一段と進んだ。

 米国金融政策の方向転換は、新興国を中心とする株式市場や商品市場への資金の流入も加速させている。そもそも新興国向け証券投資は、金融危機の影響で08年に大きく落ち込んだ後、先進国における金融緩和の影響や新興国の高い成長期待を背景に、急回復してきた。さらに米国の金融緩和観測が強まった本年夏以降、新興国株価が先進国株価を大きく上回って上昇している。何らかのイベントをきっかけに、投資家のリスク回避姿勢が一気に強まり、資金フローの急激な巻き戻しが発生する場合には、国際金融市場の不安定化に繋がりかねない。

 また、より問題を深刻化させる背景には、中国、インドをはじめ多くの新興国で物価上昇圧力が強く、資産価格の高騰もみられていることがある。こうした状況下、各国中央銀行は、これまでの金融緩和政策を修正もしくは金融引き締めを断続的に実施してきたが、海外からの投機マネーが流入し続ければ、インフレや資産バブル抑制が一段と困難になろう。最終的に大幅な引き締めを行う必要が生じ、急速な景気失速を招くリスクもある。

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