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繰越欠損金の利用制限政策はなぜ危険なのか?

磯崎哲也

磯崎哲也 公認会計士

 政府は、法人税率を引下げる代わりの財源として繰越欠損金の利用制限を検討していると報道されている。この政策は危険だ。なぜか。

 一言で言うと、経済の成長を担うベンチャー企業や大規模プロジェクトが、赤字の期間を脱して黒字化して、さあこれから伸びようというところを痛めつけられることになるになるからだ。例えて言えば、ずっと水面下を息継ぎ無しで泳いで、やっとの思いで水面上に顔を出したとたん、頭を押さえつけられて水を飲まされるようなものだ。

 繰越欠損金の損金算入とは、過去に発生した損失と今期の利益を相殺することである。報道によると、課税所得の半分にまで利用を制限するのが柱であるようだ。つまり今までは、赤字が続いて欠損金がたまった会社が黒字になった場合、今までに累積した赤字(繰越欠損金)を相殺し終わるまでは、法人税を支払わなくてよかった。しかし、この利用制限が行われると、黒字が出た年にいきなり、その利益の半分に税金がかかることになる。

 現在の法人税法では、この繰越欠損金は7年までは繰り越せる。毎年相殺できる利益の額が半分に制限されるとなれば、使えずに無駄になってしまう繰越欠損金の量が大幅に増えてしまう可能性がある。

 こうした批判をかわすために、この7年間という期間を大幅延長することも検討されているようだ。実際、米国カリフォルニア州でも、2008年と2009年は繰越欠損金をまったく利用出来なくなったが、同時に欠損金の繰越期間が、それまでの10年から20年に延長されることとなった。

 しかし、お気づきのとおり、繰越期間を延ばして長期に相殺させるというのは、本質的な税収増ではなく、将来政府が受け取るはずの税金を先食いしているに過ぎない。景気を刺激したいのなら、逆に、今の税金を下げて将来の税収が増えることを考えるべきだろう。そのために法人税率を下げるのではないのか?

 法人税率を下げて繰越欠損金の利用制限をすると、経済全体にはマイルドなプラス効果しか発生しないが、新しいことにチャレンジする大企業グループやベンチャー企業、長く続いた赤字から回復する再生企業には非常にキツいマイナスの影響が発生する。

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筆者

磯崎哲也

磯崎哲也(いそざき・てつや) 公認会計士

【退任】1984年、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。長銀総合研究所で、多様な業種の経営コンサルタント、アナリストとして勤務後、ベンチャービジネスの世界に入り、未公開企業から上場ベンチャー企業まで社外取締役、社外監査役を歴任。ブログ及びメルマガ「isologue」を執筆。公認会計士。

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