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 農業改良普及員という人たちがいる。農業の現場で農家に経営指導や技術指導などを行っている。この人たちの活動についての予算(協同農業普及事業交付金)が事業仕分けによって「予算計上見送り」と判定されたという報道に驚いた。

 私が知っている農業改良普及員の人たちは、都道府県の地方部局に所属し、農家に指導を行いながら、農政の現場で苦労している人たちである。数年前、規制改革会議がJA農協から信用・共済事業を分離するよう提案しようとしたことがあった。JAは自民党農林族を使い官邸に圧力をかけてこれを葬った。表向きJAは信用事業・共済事業の利益がなければ農家への無償の営農指導は行えないと反論した。

 しかし、JA内部では、営農指導は“赤字部門”とか“ぜいたく事業”とか言われて冷遇され、合理化の対象にされてきた。中山間地域のように農産物販売額の少なく、メリットのないところからは、JAは真っ先に撤退している。このような地域で活動しているのが農業改良普及員である。また、矛盾をはらんだ減反政策参加についての農家への説得も、減反によって実現する高米価の恩恵を受けるJAの職員ではなく、農業改良普及員や市町村の職員が夜中の集落の集会に出向いて行ってきた。

 「予算計上見送り」の理由として、「国が交付する合理的な説明になっていない。都道府県がその予算で行うべきであり、一括交付金の中で検討すべき。 都道府県自体の優先政策基準の中で実施すべき。自治体の裁量に委ねる。」などが挙げられていた。要するに地域農業の振興のための活動は都道府県に任せればよいというようである。

 これまで事業仕分けについて真剣に考えたことはなかった。改めてその役割や意義を調べてみると、 ・・・ログインして読む
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筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

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