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 最近、ノーベル平和賞授賞式の出席を巡って中国と先進国の駆け引きが激しくなっており、「出席しないように」と各国に要請する中国の姿勢が先進国の批判を招き、中国異質論の台頭に拍車をかけている。反体制作家・劉氏の受賞への反発から授賞式への欠席への働きかけを経て、先進国の目に中国の強硬姿勢がより鮮明に映る形になり、「成長し続ける巨大中国とどうやって付き合っていくのか」は先進国の間でホットな話題になっている。

 しかしながら、中国の外交戦略の立体的な構造とその進化を理解しない限り、その解も見えてこないだろう。

 中国の外交は、昔から特定の連盟や陣営を作らない「全方位外交」を掲げてきた。もちろん、そのときの世界情勢に応じてウェートをかけるが、これは、基本的に中国古来の知恵である「合従連衡」的なやり方による外交戦略である。ただし、そうした外交にも戦略的な「軸」があり、それを中心に全方位外交のフレームワークを作り上げている。

 では、今の中国の外交軸は何なのかというと、「発展軸」と「地域軸」の二つがあるといえよう。

 「発展軸」というのは、国の発展ステージによって形成される、いわゆる先進国対途上国の軸である。この軸のカバーする範囲はグローバル的で、大国を目指す中国にとっては最高レベルの外交軸になる。これに属するのは中国の対欧米や対日本の外交だ。

 もう一つの「地域軸」はアジア太平洋地域を指す。すでに地域大国化している中国にとって、足元の強化はグローバル戦略の強化につながり、それを補強する重要な役割も担う。対日本や韓国、そしてアセアンなどはこれに属する。

 もちろん、アメリカや日本などは二つの軸を跨いだ存在であり、その重要性は言うまでもないが、日本はアメリカ追随ばかりになると、中国に素通りされる危険性もある。この二つの軸から展開される中国の外交は、グローバルとローカルの二つのレイヤーをカバーしており、中国による「全方位外交」が実現される。

 中国の外交は、この二つの軸を元に各種のプラットフォームや二国間外交で柔軟に対応することになっている。G20やAPEC、アセアンプラス3、上海協力機構などの国際会議体などを通じて包括的な戦略目標の達成を図り、個別問題や包括的な戦略目標の達成補強などについては二国間外交を加える形だ。

 ただし、最近は中国の国力の増強に伴い、包括的な戦略目標達成ための重点突破として二国間外交を多用するようになってきている。米中関係はその典型だ。日中関係についても、上記のような中国の外交戦略をふまえた上で、中国に対応した二つの軸における外交戦略の構築が必要ではないか。また、一言と外交と言っても、必ずしも特定の主張一辺倒に終始するのではなく、それぞれの軸において、それぞれの戦略を構築できる強(したた)かさも必要だ。そういう意味で、今の日本の対中外交には硬直性があるように見えてならない。

 最新の現実に話を戻せば、

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筆者

肖宇生

肖宇生(しょう・うせい) フロンティア・マネジメント株式会社事業開発部マネージング・ディレクター

【退任】フロンティア・マネジメント株式会社事業開発部マネージング・ディレクター。1996年大阪大学経済学部、2001年一橋大学大学院経済学研究科卒業(経済学修士)。精密機器メーカーで中国携帯市場向けマーケティングを担当後、国内シンクタンクで中国市場のコンサルティング、ファンド会社で中国市場のプライベート・エクイティ投資に従事。日本総合研究所創発戦略センター主任研究員を経て、2011年4月より現職。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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