浜矩子
2010年12月04日
アイルランドがEUとIMFから金融支援を受けることになった。総額850億ユーロ(約9兆円)のパッケージで、そのうち500億ユーロが財政支援、350億ユーロが金融機関への資本注入に当てられる。
この内訳が問題の全てを物語っているといっていい。ことの発端は、金融機関の不良債権大幅累増である。だから、金融機関支援のための資本注入に相当額が充当される。一方、それらの金融機関の救済に乗り出したために、アイルランド政府の財政状況が大幅に悪化した。だから、財政支援のために金融機関支援を上回る金額が投入される。レスキュー隊であるはずの政府が、救出作戦の負担の重さに、みずからレスキューを必要とする状況に追い込まれた。何とも悲惨な構図だ。
かつて、アイルランドは「エメラルド・タイガー」の名称でもてはやされた。エメラルド色は、緑豊かなアイルランドのナショナル・カラーだ。その緑の国が虎なみの迫力で経済成長を成し遂げていく。その勢いに瞠目して、世界が彼らに緑の虎の称号を与えた。
だが、その勢いの背景には、ユーロという名の、それこそ「虎の威」を借る背伸びの行き過ぎがあった。
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