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「雇用、雇用、雇用」はどこへ行った

小此木潔

小此木潔 ジャーナリスト、元上智大学教授

 「どうです、みなさん」「民主党政権が初めて概算要求段階から組み立てた政府予算これです」、と胸を張ることができる内容だろうか。私にはとてもそうは思えない。

 最大の問題は、日本の再生=成長とデフレ克服に必要な雇用と需要の創出がきわめて不十分で迫力のないものになったということだろう。期待はずれである。

雇用対策特命チームの会合であいさつする菅直人首相=8月30日、首相官邸、飯塚悟撮影

 たとえば、短期的には役に立たないとわかっていながら法人減税をするのは仕方ないとしても、それは2年後の消費増税とセットということにして、それまでは減税に回す財源1兆5千億円を雇用創出の特別枠として使い、医療・介護・保育などの分野で民間の雇用助成金にあてる、といった工夫でもしていたら、多くの雇用が生まれただろうに……。

 菅政権は「一に雇用、二に雇用、三に雇用」と語った菅直人首相の言葉通りの予算編成をするのであれば、そうした大胆な、目に見える政策を打つべきであった。

 概算要求段階では、雇用誘発係数の大きい事業を優先することや、雇用につけない人びとに職業訓練の機会を増やすことなどが語られていたはずだし、首相みずから「介護などで雇用を増やせる」などと口にしていた。「待機児童ゼロ」作戦といったスローガンも飛び出した。

 しかし、それらは聞こえのよいキャッチフレーズの域を出なかったようである。

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