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 先日、中国のある民間組織が設立した「孔子和平賞」が、先進国のメディアを賑やかしている。中国と先進国の間で問題となっている今年のノーベル平和賞の授賞式前日に発表されたから、なおさらノーベル和平賞への対抗だとして、先進国のメディアの論調は熱くなる一方だ。中国政府が世界に反発していると受け止められ、その唐突さや軽率さから、世界中の人々は中国政府の「幼稚さ」に失笑してしまっている。しかしながら、これは中国政府の行為と受け止めてよいのだろうか?

 そもそも「孔子和平賞」は、中国国内でもあまり一般的な人に知られていない、ある民間組織によって創立された「賞」だ。

 発端は11月15日に「環球時報」に掲載された一人の評論家の文章だ。この文章は「孔子和平賞」の創立を訴えた。「環球時報」は人民日報の傘下というべき存在で、多くの先進国のメディアは、中国政府との関連を連想して、一方的に決め付けてしまったようだ。

 しかし、その選考委員会(何人かの知名度のあまり高くない中国の大学教授などから構成)や授賞式の拙劣さから見て、少し理性的に考えれば、それは一民間組織の「売名行為」でしかないのは明らかだった。

 そもそも、中国政府も賞の創立は寝耳に水だったし、賞と政府の関連性を否定している。中国国内のメディア関係者も多くは「悪戯」と受け止めており、先進国のメディアと同様に、笑っていた。中国国内の多くのネットユーザもギャグとしか見ていないのに、アメリカの大メディアが、ナチス・ドイツが設けた賞と比較するなどして真顔で報道したのは不思議で仕方ない。中国の否定的イメージにとらわれて思考停止しているか、わざとそういう風に仕立てているか、どちらかだろう。

 日本の「反中」論客による関連の記事を読んでも、思わず噴き出してしまったほどナンセンスなものが多かった。これでは、「反中」のスタンスを謳ったとしても中国に相手にされないだろう、と忠告したいところだ。

 確かに最近、中国では「文化大革命」で破壊された伝統文化や価値観を国の伝統としてとらえ直そうとする動きがある。孔子と彼の思想はその典型だ。中国語や中国文化を世界中の人々に伝えるために作られた語学教育組織に「孔子学院」と名付けたのもそのためだ。中国は経済などハードパワーの増長に伴って、 ・・・ログインして読む
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筆者

肖宇生

肖宇生(しょう・うせい) フロンティア・マネジメント株式会社事業開発部マネージング・ディレクター

【退任】フロンティア・マネジメント株式会社事業開発部マネージング・ディレクター。1996年大阪大学経済学部、2001年一橋大学大学院経済学研究科卒業(経済学修士)。精密機器メーカーで中国携帯市場向けマーケティングを担当後、国内シンクタンクで中国市場のコンサルティング、ファンド会社で中国市場のプライベート・エクイティ投資に従事。日本総合研究所創発戦略センター主任研究員を経て、2011年4月より現職。

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