原真人
2010年12月23日
来年度の「税制改正大綱」が先週、閣議決定された。法人税5%減税をはじめ、意外に大物ぞろいのこの税制改正。その立役者は「消費税増税の回避エネルギー」だ。
この税制改正を例えていうなら、次のような構図だろうか。
抜本的な大手術が必要な重病患者が「手術を受ける踏ん切りだけは、まだつかない」と医者に先送りを頼んだ。ただ病状悪化も心配だ。そこで、これまで避けてきた苦い薬もちゃんと飲み、リハビリにも積極的に取り組むことだけは覚悟を決めた。
つまり菅政権は消費税増税という抜本改革は先送りをした。ただ、それでは財政がにっちもさっちもいかなくなる。そこで、これまで積み残されていた税制改正メニューを片っ端から拾い上げ、収支尻のつじつまをつけようとしたのだ。
菅直人首相は「消費税10%」に言及しながら、参院選敗北で消費税問題に口を閉ざしてしまった。この税制改正でも完全にこの問題を封印した。政府税調でも消費税はほとんど議論の対象にならなかった。情けないことだ。しかし、結果的にその消費税回避エネルギーが、長年の懸案だった他の税制案件の「在庫一掃」へと転化していったのは皮肉だ。
まず法人税の減税。国際的に高すぎる税率は、国内雇用を維持するためにも引き下げは避けられない情勢だった。本来なら消費税増税とセットで実現すべきものだろうが、消費増税のめどが立たないなかでも、いよいよ法人減税だけを先行せざるをえなくなった。経済界の強い批判を背に、雇用問題への影響が心配されたからだ。菅首相が5%幅の減税を決断したのは当然だろう。しかも、
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください