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縦割りの社会保障は瀕死の重傷

松浦新

松浦新 朝日新聞経済部記者

 いま、共通番号制を導入できないと、国民皆保険、皆年金も絵に描いたもちになる。制度がバラバラで、日本年金機構(旧社会保険庁)が、きちんとした制度の適用をできていないためだ。その結果、収入が減ると、不正をしてでも負担が軽い制度に行こうとする動きが自然におきる。

 国民にとって優先度が高いのは、医療保険だ。日本は、ありがたいことに、どの医療保険に入っていても、同じサービスを同じ値段で受けられる。だとしたら、少しでも「安い医療保険」を探すことは責められない。一方、年金は将来減らされることがはっきりしているのに、保険料は上がっていくことが法律で決められている。割が合わない負担で、4割の加入者が払っていない制度があれば、そっちに入っておこうというのは人情だ。

 この2つの流れがひとつになっているのが国民健康保険組合だ。保険料が安く、未納でも形だけの督促しかない国民年金に入ることができる。

 しかし、ここに問題がある。国民健康保険組合は市町村が運営している国民健康保険の一種という位置づけなので、原則として株式会社などの法人企業で働いている人は加入できない。協会けんぽに入って厚生年金にも加入する必要がある。

 いま、問題になっている全国建設工事業国民健康保険組合(全建国保)の問題は、その典型といえる。朝日新聞の取材で株式会社などの法人に勤める人たちが多数加入していることが発覚した。建設業に従事しているべきなのに、資格を偽った人も多く、不正な加入者が全体の15%にあたる2万8千人もいた。

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