WEBRONZA編集部
2011年01月01日
2008年秋のリーマン・ショック後、世界経済は各国による巨額の財政出動と、新興諸国の成長により、何とか二番底を回避しながら巡航を続けています。そのなかで、日本経済については、「失われた10年」から「失われた20年」という認識が定着、今や「失われた30年に突入か」という議論さえあります。経済のグローバル化が一段と加速するなか、確かに産業構造の転換が進まず、次世代へのイノベーションの息吹も乏しいように見えます。2011年、日本経済はどうなるのか。経済・雇用ジャンルの筆者の方々にうかがいました。
回答者:小原篤次、武田洋子、永井隆、根本直子、藤井英彦、山下一仁、小此木潔、小森敦司、竹信三恵子、原真人、松浦新、編集長・一色清(敬称略)
◇GDP(国内総生産)をどうみるか
否定する回答では、藤井英彦さんが「2010年の成長を支えたリード役の牽引力が低下」するという。具体的には、「輸出の伸び悩みと、10年に大幅に売り上げが増加したエコ家電とエコカー効果が剥落」するとみる。原真人さんも「内需にエンジンがなく、頼みの外需は欧米が来年は今年より悪くなる。新興国もいよいよインフレやバブルが心配でイケイケドンドンではなくなる」と、牽引役の力の低下を指摘する。
根本直子さんは「政府見通し(1.5%)を上回る可能性は少ない」とし、「政府の成長戦略の効果はあまり期待できません」。法人税減税は打ち出されたものの、日本の企業の成長を本当に支援していくという明確な姿勢がみえず、国内の設備投資は低調に推移。財政再建も含めた将来の見通しが暗いなか、個人消費も盛り上がらない」と指摘している。小此木潔さんは世界景気の回復テンポが鈍化すると指摘したうえで、「企業活動も回復の動きは続くが、力強さを欠く。政治の迷走が投資・消費の低迷に長い影を落とす」と、政治の混迷の影響を懸念する。
武田洋子さんは「実質GDP成長率で1%程度と穏やかながらも景気の回復持続を予想」。小原篤次さんは「外需が伸びることで若干上回る程度」との見方を示す。回答を寄せた方々が極めて慎重な見方をしているのが印象的だ。
◇失業率は改善するか
力強い経済成長が望めないとなると、国内の雇用環境はどのように推移するのだろうか。2010年11月も5.1%と高止まりしたままの完全失業率は改善するのか。
この問いへの回答はほとんどが否定的だった。
永井隆さんは、「大手自動車は主力車種でさえ、海外生産へと舵を切っている。日本企業が、日本国内で、日本人を雇用するメリットは薄くなっている」と、グローバル化せざるをえない企業活動の影響を指摘。また、「失業率の改善があるとすれば、就職を諦める求職者が増えるからだろう。非正規雇用も減らないはず」という。竹信三恵子さんも改善しない理由として、「非正規の増加で働き始めてもすぐに契約が終わってしまう半失業状態の人が減らない」と指摘する。失業率は概ね横ばいで推移するとみる小此木さんも「改善したように見える局面もあるだろうが、求職活動をあきらめた人が増えていることが大きな要因で、見せかけの回復という側面が強い」とみる。
藤井さんは大幅な需給ギャップの存在を指摘する。「稼働率が依然低水準で推移するなか、企業の慎重な雇用マインドが今後、短期間のうちに好転する展開は期待薄」という。武田さんは「企業経営者は新規雇用に対して慎重な姿勢を維持」するとしたうえで、「既存の企業・産業から新しい企業・産業へと雇用がシフトする必要があるが、これには時間を要する」と短期的な改善の難しさを示唆している。
◇環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への日本の参加は
設問は、「TPPへの加入決定、あるいは加入が具体的に固まるか」。この問いへの回答の特徴は、農政の専門化である山下一仁さんを含め経済・雇用ジャンルで回答を寄せた12人全員が、基本的にTPPに参加すべきであると認識していることだ。参加そのものへの反対、否定的な見解はなかった。
そのうえで、
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください