藤井英彦(ふじい・ひでひこ) 株式会社日本総合研究所 調査部長/チーフエコノミスト
【退任】(株)日本総合研究所 理事/チーフエコノミスト。83年東京大学法学部卒業。同年住友銀行入行。90年より(株)日本総合研究所、11年から現職。共著に「オバマのアメリカ 次なる世界経済の行方」(東洋経済新報社)、「2006 図解 日本総研大予測」(徳間書店)、「図解 金融を読む辞典」(東洋経済新報社)。
藤井英彦
貴金属価格が再び上昇し始めた。金は1トロイオンス1,400ドル、銀は同30ドルを超え、最高値を更新した。金や銀だけではない。原油価格も1バレル90ドル台に乗せた。
貴金属や資源エネルギー価格の上昇は、まずハイペースで成長する新興国経済に起因する。所得水準が上がり、中間層の形成に拍車が掛かって需要の増勢が加速した。今後を展望しても、年9%成長を続ける中国やインドを筆頭に新興国経済の飛躍的成長は少なくとも2010年代半ばまで持続する見通しだ。
貴金属や資源エネルギーに対する旺盛な需要は今後一段と拡大しよう。
加えて、ドル安も価格上昇に作用した。2000年代に入り貴金属や資源エネルギー価格はドルが減価すると上昇し、ドルが増価すると下落する逆相関の関係が次第に鮮明になった。背景には、ドルの先行き不安に根差したリスク回避の動きがある。
ドル安が進行すると、例えば生産者の手取りは実質的に目減りするし、株や債券などドル資産に投資している人々からみれば評価損が発生する。ドル安懸念が拡がり定着するほど、ドル資産から安全資産に乗り換えようとする動きが強まる。
端的な事例が外貨準備の動向だ。
昨年末のIMF発表によると、
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