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 FRB(連邦準備制度理事会)の量的緩和策第二弾(QE2)は、中長期金利の低下を通じて設備投資や個人消費を刺激することを意図している。しかし、銀行は規制の強化や、住宅市場をめぐる混乱の影響もあって、リスク回避指向を強めている。

 米国大手6大金融機関の2010年1~9月の税前利益は前年度平均比50%増加した。プラスの点として、企業、個人向け貸出の償却率が改善した。例えばクレジットカードの償却率は10年第2四半期の11%が、第3四半期は8%に低下している。この結果、貸倒引当金の戻り益が発生して、業績を下支えした。また株価の回復や債券発行の増加を受けて、証券部門の収益は好調であった。

 一方、ネガティブな点として、商業用不動産ローンの償却率がなお悪化している。不動産関連の貸出のウエイトが高い地方銀行では、より深刻な問題だ。

 また、貸出ボリュームの減少に加えて利ざやが低下し、資金利益は縮小している。2010年第3四半期の銀行全体の貸出残高は、前年比マイナス4%であった。2009年のマイナス10%に比べると減少幅が縮小しているが、回復力は弱い。銀行は、徐々に貸出を積極化させているとはいえ、リスクの高い個人や中小企業に対しては、依然慎重な姿勢をとっている。

 融資担当者を対象としたFRBの調査でも、審査基準が過去の平均のレベルに回復するのは2012年かそれ以降という回答が多数を占めていた。中でも雇用創出の鍵を握る中小企業は、銀行の貸出姿勢から受ける影響が大きいので、その動向は注目される。

 他方、大手銀行は昨年秋頃から延滞者の住宅差し押さえ手続きの一時停止を余儀なくされている。差し押さえの急増で、必要な書類や手続きの不備が発覚し、訴訟が提起されたり、司法省の調査を受ける事態になったためだ。

 差し押さえの停止は、支払いは停止されたが物件の売却が終了していない「シャドー在庫」の増加を通じて、銀行の財務内容を悪化させる。また住宅価格にもマイナスの影響を与える。最近の業績の持ち直しは住宅価格の回復に支えられていただけに、

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筆者

根本直子

根本直子(ねもと・なおこ) 早稲田大学 大学院経営管理研究科 教授/アジア開発銀行研究所、 エコノミスト

日本銀行、S&Pグローバル、マネージング・ディレクターを経て現職。主なリサーチ分野は、金融機関経営、日本およびアジアの金融市場、包摂的成長。 早稲田大学法学部、シカゴ大学経営大学院、一橋大学商学研究科、商学(博士) 主な著書に「韓国モデルー金融再生の鍵」「残る銀行沈む銀行―金融危機後の構図」 財務省 関税・外国為替等審議会委員、中部電力、コンコルディア・フィナンシャルグループ社外取締役、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF) 経営管理委員。

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