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明るさを取り戻しつつある米国経済、潜む危機の後遺症

武田洋子

武田洋子 三菱総合研究所チーフエコノミスト

 米国経済は、注目の年末商戦が好調に終わるなど、一頃に比べて明るさを取り戻しつつある。雇用・所得環境の回復が緩やかな中でも消費が堅調に推移している背景には、昨年夏以降、FRBによる金融緩和期待(実際には11月のFOMCにおいて大規模な国債買入れを決定)から株価が上昇傾向を辿ったことで、家計の財布の紐が緩んだことが背景にあろう。

 さらに政府が追加経済対策を打ったことも、景気回復期待を高める要因となっている。オバマ米大統領は、12月17日、減税延長法(Tax Relief, Unemployment Insurance Reauthorization, and Job Creation Act of 2010)に署名したが、同法にはブッシュ減税()の2年間の延長のみならず、失業保険給付の13ヶ月延長、給与税の2%減税、企業設備投資の初年度一括償却なども盛り込まれている。

 同法施行による米国経済への影響について、一定の前提をもとに試算すると、2011年の実質GDP成長率を0.5%~0.7%程度押し上げるとの結果が得られる。長期金利の上昇がFRBによる量的緩和効果をある程度減殺する可能性はあるが、総じてみれば景気の押し上げ要因となろう。欧州のソブリンリスクや中国でのインフレ高進などの懸念材料が国際金融市場を大きく揺るがすことがなければ、2011年の米国経済は2%台後半~3%程度成長することが予想される。政策終了による消費の反動減が懸念される日本にとっても、米国経済に明るさがみえてきたことはプラス材料となる。

 しかし、

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