原田泰(はらだ・ゆたか) 原田泰(早稲田大学教授)
早稲田大学教授。1974年東京大学卒業後、同年経済企画庁入庁、経済企画庁国民生活調査課長、同海外調査課長、財務省財務総合政策研究所次長などを経て、2012年4月から現職。「日本はなぜ貧しい人が多いのか」「世界経済 同時危機」(共著)「日本国の原則」(石橋湛山賞受賞)「デフレはなぜ怖いのか」「長期不況の理論と実証』(浜田宏一氏他共著)など、著書多数。政府の研究会にも多数参加。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
原田泰
世の中に溢れる論評を見ていて不思議に思うことが良くある。
少なからぬ政治記事が、民主党政権は行き詰まり、衆議院の解散が近いと予想していた。しかし、合理的に考えれば、解散はないと考えるしかない。民主党が、参議院で多数を取っていないからねじれなので、衆議院を解散してもねじれは解消できない。ねじれを解消するためには、民主党が衆議院で負けるしかない。解散権は民主党の党首である総理大臣にある。合理的に考えれば、負けるために解散するはずはない。
もちろん、不人気な党首を降ろそうという動きはあるかもしれない。これは自民党が与党時代にしたことだ。しかし、小沢一郎氏というファクターが事態を複雑にする。小沢氏が影響力を低下させた後にしか、民主党の党首を変えようという動きにはならないのではないだろうか。さらに、党首が変っても、新しい党首は、任期がほとんど尽きない限りは解散をしないのではないだろうか。自民党も任期が尽きるまで解散しなかった。
民主党のある議員から、自民党議員の背広が傷んでいると聞いた。野党になれば資金が集まらず、新しい背広を作るのも大変だというのだ。1年くらいでそんなにひどく痛むものか不思議だし、また、実際に私が見た限りでは、それほど傷んでいるようには見えなかった。しかし、野党になった自民党が資金不足で大変なら、その状況を長く続けさせる、すなわち、解散しないことが民主党にとって合理的だ。
もちろん、自民党の立場からすれば、解散が望ましい。しかし、