山下一仁
2011年01月26日
菅政権が起死回生の政権浮揚策として消費税とTPP参加を打ち出したことは、今回の内閣改造で一層明らかとなった。
自民党出身で財政再建論者である与謝野馨氏を党内外の反対を押し切って経済財政相に任命し、TPPに消極的な姿勢を示してきた経済産業相を代え、後任に自由貿易推進論者である海江田万里氏を据えた。与謝野氏もまた自由貿易推進論者であり、氏とともに「たちあがれ日本」には合流しなかったものの、自民党の中には依然政策的に同じ意見を持つ議員は多い。
さらに、菅政権と対立している小沢グループにはTPPに反対する人たちが多いが、海江田氏は小沢氏に極めて近い存在である。自民党にも党内にも消費税とTPPという政策面での対話や協調を呼びかけ、ねじれ国会を何とか乗り切ろうとしたのだろう。
菅首相は国会での施政方針演説のなかで、国作りの第一の理念として「平成の開国」を挙げ、6月をめどにTPP交渉参加について結論を出すと言明した。しかし、この意気込みに比べ、国内の反対勢力をどうやって納得させていくかどうかについては十分な戦略を欠くように思われる。
与謝野氏を通じた自民党との協調も、同党から除名処分を受けた与謝野氏に対する同党の拒否反応は強く、また、同じく小沢氏に近いといっても東京選出の海江田氏と常に農民票を考えなければならない農村部出身の議員とではTPPへの対応は全く異なる。
それだけではない。「TPPと農業問題」というように、全農業界がTPPに反対しているような構図にされてしまっているが、誰が反対勢力かと見極め、それを突き崩すためには何をしなければならないのかという戦略がない。
農業といっても高い関税で保護されているのは一部である。
野菜や果物の生産額は米を上回るが、関税はほとんどかかっていない。
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