原田泰(はらだ・ゆたか) 原田泰(早稲田大学教授)
早稲田大学教授。1974年東京大学卒業後、同年経済企画庁入庁、経済企画庁国民生活調査課長、同海外調査課長、財務省財務総合政策研究所次長などを経て、2012年4月から現職。「日本はなぜ貧しい人が多いのか」「世界経済 同時危機」(共著)「日本国の原則」(石橋湛山賞受賞)「デフレはなぜ怖いのか」「長期不況の理論と実証』(浜田宏一氏他共著)など、著書多数。政府の研究会にも多数参加。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
原田泰
◇誰かの需要は誰かのコスト◇
賃金を引き上げればデフレから脱却できるという人もいる。
賃金は消費の原資だから、賃金が上れば消費が増える。消費はGDPの6割以上を占めるから、GDPも増えて、すなわち需要が伸びて、経済はデフレから脱却できるような気がする。
しかし、賃金を上げてもデフレから脱却することはできない。
賃金は労働者にとっては需要の元だが、企業にとってはコストである。コストが上れば、利潤が減る。利潤が減れば、企業は設備投資を減らすか、雇用を減らすか、その両方をする。設備投資は需要であるから、投資が減れば需要が減る。これはデフレ要因である。雇用を減らせば、一人当たりの賃金が増えていても、賃金合計額は減ってしまうことが多い。需要の合計も減少するだろう。
賃金だけでなく、個別の需要を作り出せばデフレから脱却できるというあらゆる議論は誤りである。
環境、医療、介護、育児で需要を作っても、デフレから脱却できない。
環境規制でソーラー電池への需要が増えることは、ソーラー電池メーカーにとっては需要だが、それを設置しなければならない人にとってはコストである。需要増大効果とコスト上昇効果のどちらが大きいかは分からない。
医療、介護、育児も同じだ。これらの産業は税金を投入しなければ需要を作れない。増えた需要と増税で生じた需要減のどちらが大きいかは分からない。
◇問題は金融政策◇
では、どうしたら良いのか。
民主党も自民党も理解していないようだが、イギリスの労働党は、問題は金融政策だと1930年代に理解した。
労働党は、
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