原田泰
2011年01月29日
◇誰かの需要は誰かのコスト◇
賃金を引き上げればデフレから脱却できるという人もいる。
賃金は消費の原資だから、賃金が上れば消費が増える。消費はGDPの6割以上を占めるから、GDPも増えて、すなわち需要が伸びて、経済はデフレから脱却できるような気がする。
しかし、賃金を上げてもデフレから脱却することはできない。
賃金は労働者にとっては需要の元だが、企業にとってはコストである。コストが上れば、利潤が減る。利潤が減れば、企業は設備投資を減らすか、雇用を減らすか、その両方をする。設備投資は需要であるから、投資が減れば需要が減る。これはデフレ要因である。雇用を減らせば、一人当たりの賃金が増えていても、賃金合計額は減ってしまうことが多い。需要の合計も減少するだろう。
賃金だけでなく、個別の需要を作り出せばデフレから脱却できるというあらゆる議論は誤りである。
環境、医療、介護、育児で需要を作っても、デフレから脱却できない。
環境規制でソーラー電池への需要が増えることは、ソーラー電池メーカーにとっては需要だが、それを設置しなければならない人にとってはコストである。需要増大効果とコスト上昇効果のどちらが大きいかは分からない。
医療、介護、育児も同じだ。これらの産業は税金を投入しなければ需要を作れない。増えた需要と増税で生じた需要減のどちらが大きいかは分からない。
◇問題は金融政策◇
では、どうしたら良いのか。
民主党も自民党も理解していないようだが、イギリスの労働党は、問題は金融政策だと1930年代に理解した。
労働党は、
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