藤井英彦
2011年01月29日
デフレ解消に賃上げが有効との見方がある。
賃上げで消費が増えれば、景気は力強さを増し、総需要が増加して需要不足が縮小しよう。次いで雇用や設備投資が増えると、成長が加速され需要不足の解消が進もう。その結果、需要増と雇用投資の増加の相互作用、いわゆる本格的な内需主導の成長スパイラルが起動すれば、デフレ脱却が視野に入ろう。
もっとも、賃上げでデフレ脱却が出来るか否か、問題は二つある。賃上げが需要不足をどこまで縮小させるか、需要の海外流出がどれほど進むかだ。
賃上げが小さければ需要不足の縮小規模は小さく、デフレギャップは解消されない。賃上げが大きければ需要不足は無くなるかもしれない。しかし、増えた需要の一部は輸入増加を通じて海外に流出して国内の雇用や設備の増加に繋がらない一方、価格競争力が失われて生産拠点の海外移転に拍車が掛かるリスクもある。それらをどうみれば良いか。
まず需要不足の解消効果をみよう。
わが国の需要不足は2010年7~9月期でGDPの3.5%、15兆円規模だ。一方、雇用者報酬は255兆円だ。このところ議論されている賃上げ率1~2%を単純に掛けると、雇用者報酬は2.6~5.1兆円増える計算になる。貯蓄率は2009年度と同様の5.5%、輸入は増加せず全額が消費、すなわち国内需要に廻るとすると、雇用者報酬が2.6兆円増えると需給不足はGDP比2.6%に、5.1兆円なら需給不足は2.1%に減少する。ピークとなった09年1~3月期の8%に比べれば大幅な縮小だ。
しかし、過去を振り返ってみると、
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