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アジアで動き始めた日本企業のしたたかさに明るい希望

木代泰之

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

 1991年のバブル崩壊から始まった「失われた20年」の間に、世界の産業構造はすっかり変わった。

 米国ではグーグル、アマゾンなど新しいビジネスモデルのICT(情報通信技術)企業が登場して世界を席巻。アジアでは韓国・中国・台湾の製造業が躍進を遂げている。その狭間にいる日本企業は立ち位置が危うく見える。これまで通りに競争優位を維持できるのだろうか。しかし、最近のアジアでの活動ぶりは、日本企業の対応の柔軟さとしたたかさを見せつけている。そこに明るい希望が見える。

 半導体や液晶パネル、パソコンの製造で韓国・台湾・米国企業に地位を奪われた日本の電機メーカーが、いま相次いでアジア域内での事業再編にまい進している。東芝はシステムLSIの生産を韓国のサムスン電子などに委託し、自らは開発設計に専念すると発表した。製造設備を持たないことでコストを下げる。日本得意の、開発から生産まで一貫して自社でおこなう「垂直統合」から「水平分業」への転換である。

 部品・素材メーカーも大挙して韓国に動いている。東レは得意の炭素繊維の生産拠点を韓国に新設する。旭化成も韓国で高品質樹脂の増産体制に入る。だが、なぜ人件費の高い韓国で生産強化するのだろう。韓国はアジア諸国や米国、EUとのFTA(自由貿易協定)に熱心で、自由貿易圏の拡大に懸命だ。FTAが広がれば、現地企業は韓国から世界への輸出が有利になる。しかも電力料金は日本の半分、法人実効税率は約6割。韓国政府が韓国企業のために整えた条件を、そっくりいただけるのである。

 日本政府は「平成の開国」をうたうが、保護産業の抵抗で貿易自由化はいつも韓国に遅れを取ってきた。それなら企業は自分で知恵を絞って工夫するしかない。

 1月5日、韓国貿易協会は2010年の対日貿易赤字が前年より21億ドル多い過去最大の348億ドルになると発表した。

 原因は、サムスンやLGが半導体や家電をがんばって輸出するほど、日本に依存する部品や素材の輸入が増えるからだ。韓国の輸出が1%増えると、

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筆者

木代泰之

木代泰之(きしろ・やすゆき) 経済・科学ジャーナリスト

経済・科学ジャーナリスト。東京大学工学部航空学科卒。NECで技術者として勤務の後、朝日新聞社に入社。主に経済記者として財務省、経済産業省、電力・石油、証券業界などを取材。現在は多様な業種の企業人や研究者らと組織する「イノベーション実践研究会」座長として、技術革新、経営刷新、政策展開について研究提言活動を続けている。著書に「自民党税制調査会」、「500兆円の奢り」(共著)など。

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