木代泰之
2011年02月12日
最近話題になっている中国の蟻族(ありぞく)の話から始めよう。北京や上海などの大都市には、大学を卒業したものの就職できず、アパートで過密な共同生活をしながら職探しをする若者がたくさんいる。生活ぶりがアリに似ているので、そう呼ばれる。
中国の大卒者は毎年650万人で、10年前の100万人から一気に増えた。しかし、経済が発展したといっても多くは生産工場の段階にあり、大卒の若者が望む研究開発やオフィスでの仕事はまだ少ない。ホワイトカラーとブルーカラーの間には先々10―20倍の賃金格差が生じる。大金を投じて進学した彼らにとって、ここは譲れない一生の分かれ目なのだ。
1月末に来日した華南理工大学建築学院の何鏡堂院長は「大学数がとにかく増えた。この数年でも100校以上。私立大学は計画から2年もあれば完成する。私が手伝ったのもいくつかある」と語り、就職浪人増加の背景に大学乱立があることを指摘した。利潤を得る手段としての大学建設ラッシュと、その結果としてのミスマッチ。蟻族の若者たちは拝金主義の犠牲者でもある。
さて日本であるが、ここにも別のミスマッチがある。「若者が内向きになった」と言われる一方で、企業が採用したがるのは「世界で活躍できる英語力や専門知識を備えた人材」だ。海外留学や海外勤務を望まない若者たちと、グローバル競争で海外進出に社運をかける企業との間に、大きな意識のズレが起きている。
若者が内向きになる主な理由は一人っ子が増えたからだと筆者は思っている。中国は強制的に一人っ子にしたが、
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