木代泰之
2011年02月15日
新日鉄と住友金属が合併し、粗鋼生産量で世界第2位の会社になる。成果を出すための戦略はまだ明らかではないのに、経済界はあげて「グローバル化への号砲」「新たな歴史への挑戦」とほめそやしている。公正取引委員会の審査をけん制するエコノミストの言論も盛んだ。さすが経団連御三家(新日鉄、東京電力、トヨタ自動車)の底力を見せている。
日本の鉄鋼メーカーは自動車用鋼板などの高級鋼に力を入れてきた。他社がまねのできない高付加価値化を究めるという点で、電機や機械、素材など他の製造業と同じ路線を走っている。だから合併による新会社の成否は、日本の製造業全体の未来図にかかわる試金石になる。
世界の製造業は大まかに言えば、欧米や日本などの先進国から、段階を追ってアジア諸国などの新興国へと中心が移りつつあり、先進国は脱工業化(情報産業化や金融化)に進むという構造変化が起きている。
中でも鉄鋼業などのスモーク・スタック・インダストリー(煙突産業)は、新興国や資源国がいち早くヘゲモニーを握った分野である。いま世界ランキング上位(表1)に名を連ねるのは、インド人が経営するアルセロール・ミタルや中国の国有企業、韓国企業だ。ブラジルやロシアにも有力企業がある。これらの国々には巨大市場、鉱物資源、インフラ整備による建設内需があり、人件費は安い。何よりも鉄を多く使う自動車産業が成長している。
鉄鋼業は19世紀前半に英国で発展したが、
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