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小麦価格が世界を左右する

藤井英彦

藤井英彦 株式会社日本総合研究所 調査部長/チーフエコノミスト

 食糧価格が一段と上昇している。FAO(国連食糧農業機関)によると、2011年1月の食糧価格は過去最高となった。とりわけ砂糖の値上がりが大きい。穀物の値上がりも重要だ。単なるインフレ問題にとどまらず、政治的な意味合いが強まった。

 端的な例がチュニジアやエジプトだ。経済的側面からみれば、構図は次の通りである。

 まず貧困層の多さだ。1人当たりGDPと失業率をみると、2010年時点でチュニジアが4,160ドルで13.2%、エジプトが2,771ドルで9.2%。平均所得水準が3~4千ドルにとどまるなか、失業率が10%前後に上る。とりわけ若年層の失業率が高い。15~24歳の男性失業率はチュニジアが31%、エジプトは23%だ。

 次いで1980年代前後の人口増加の結果、近年若年層が急増したことが追い討ちを掛けた。雇用の受け皿作りが間に合わず、血気盛んな若年層で不満の蓄積が進んだ。ちなみに2010年の総人口に占める15~34歳人口のシェアはチュニジア38%、エジプト37%だ。先進各国の2割強を大きく上回る。

 最後に小麦輸入への依存だ。国内需要に対する小麦輸入のシェアは

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