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「世界一」の自負と技術過信が招いたトヨタの“蹉跌”

木代泰之

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

 1年前、「プリウス」のブレーキ問題などで米政界やマスコミに叩かれたトヨタが、今も米国市場で苦戦している。2月8日、米運輸省は、「トヨタの電子制御装置はシロ」と発表したが、米国民の心に「消費者に知らせるべきことをきちんと語らない企業」という印象を強く残してしまった。トヨタ元幹部は「ブランドの回復には長い時間とコストがかかる」とため息をつく。グローバル化で海外に出て行く日本企業にとっては「他山の石」だ。教訓とすべきことは何だろうか。

2月8日午後、米運輸省で開いた記者会見でのラフッド米運輸長官。トヨタ車の電子系統に問題がなかったと発表した

 経過を追って問題点を見ていこう。2009年8月、「レクサス」のフロアマットがアクセルペダルに引っかかって暴走し4人が死亡する事故が起きた。本来のマットが泥で汚れるのを防ぐために、上に頑丈なゴム製マットを敷いていたことが直接の原因だった。

 トヨタは「ユーザー側の問題だ」としたが、マットを重ねて敷くのは米国ではよくある習慣で、トヨタディーラーでもゴム製マットを売っている。米当局は「米国で車を売る以上、それに配慮した設計が必要」とトヨタに警告。トヨタはアクセルペダルのリコールを発表し、日本では10年2月に品質保証担当副社長が、豊田章男社長の代わりに幹部として初めて記者会見した。しかし、質問が相次ぐなか質疑を途中で打ち切って退席。この辺からトヨタの迷走がひどくなった。

 2月には「プリウス」のブレーキ問題が表面化した。「滑りやすい路面を走っているとき、ブレーキが一瞬きかなくなる」という苦情が米当局に102件も寄せられていた。ハイブリッド車には「回生ブレーキ」という仕組みがあり、モーターを発電機として使うことで電気を発生させ蓄電池に蓄える。

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