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「年金マガジン-ネット探検隊が行く」vol.5年金制度は「満身創痍」※vol1、2無料公開

松浦新

松浦新 朝日新聞経済部記者

 「年金ジャングル」に足を踏み入れたネット探検隊。今週は「所得代替率50%維持」のなぞに挑戦する。04年改革の時に与党だった自民党と公明党が打ち出した「年金100年安心プラン」の重要な部分だが、調べるうちに年金制度が「傷だらけ」になっていることも見えてくる。より多くのみなさんに興味をもって読んでいただけるようvol.1vol.2無料公開しています。ぜひお読みください。

「年金マガジンネット探検隊が行く」vol.1 改革は一体どこへ

「年金マガジン-ネット探検隊が行く」vol.2年金の仕組みから理解しよう

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 【ネット探検隊】年金の現状や改革の方向性をネット上のデータを探索しながら明らかにしていく。隊長、隊員は以下の3名。

 隊長:香川年男 1973年生まれの37歳。バブル崩壊後、阪神大震災の年に社会に出た。

 隊員:本田景子 1985年生まれの25歳。リーマン・ショック前の平成ミニバブル期の採用。

 隊員:岡崎金人 1947年生まれの63歳。団塊世代の先頭集団で、定年後も嘱託で働く。

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 本田 「所得代替率50%」って何のことですか?

 岡崎 小泉内閣の時の04年改革でいろいろ議論になったことだけど、本田君はまだ19歳で国民年金保険料も払っていない時の話だね。「100年安心」と言っていたけど、あれからもう7年もたつんだなあ。

 香川 ネットでいろいろ探してみたけど、当時、政権にあった自民党はこんな説明をしています。要するに(1)保険料引き上げに上限を設ける(2)給付水準は現役世代の手取り収入の50%を下回らない(3)基礎年金の国庫負担を半分にする――ということですね。

 岡崎 いろいろ論点はあるけれど、きょうのテーマの「50%維持」を調べよう。考え方は厚労省のホームページに書いてある。具体的には厚労省が示した試算がある。このページの一番下の一覧表に、いろいろなケースが示されているけど、まずはモデルケースの「(1)夫のみ就労の場合」を見てみよう。ここにある「39.3万円」は、「夫の平均手取り収入」だ。それも、ボーナスを合わせた年収を12カ月で割ったものになる。もとになる標準報酬月額は表の下の「※2」にある「36.0万円」だ。ちょうどいい題材なので、今回は厚生年金額の全体を計算してみよう。

 香川 そうですね。面倒な計算ですけど、代替率から考えると、年金の仕組みがよくわかりますからね。

 本田 では、連載2回目に出てきた年金額の計算方法のホームページを見てみましょう。まずは報酬比例部分から計算します。例によって「特例水準」のほうの計算式を見ると、「被保険者期間の月数」が必要です。

 香川 年金の加入期間は40年がモデルになっている。40年加入は480カ月だ。この計算式は1年分の支給額を求めるものなので、月額を出すために12で割ると40となる。話をわかりやすくするために乗率は10を使う。すると「100分の40」、すなわち「40%」となる。要するに、報酬比例部分は現役時代の平均月給の40%を保証するものなんだ。

 本田 でも、連載の2回目で見たように、団塊世代以降は乗率を「7.5」に下げられていますね。ということは、4分の3の30%しか保証されないということになります。要するに、40年間、毎月保険料を払っても、昔の人が30年加入で得たものしかもらえないということですね。やっぱり納得いきませんねえ。

 岡崎 それは2回目で確認したことだから、とにかく先に進もう。報酬比例部分は約10万8千円だ。

 本田 でも、さっき見た厚労省のホームページには「10.1」万円とありますよ。それに、計算式には「×1.031×0.985」なんて細かい“しっぽ”がついています。

 香川 これには、過去に繰り返されてきた年金の「改革」が影響している。とにかく減らさないといけないからいろんなことをしているんだけど、そのために制度がわかりにくくなっているよね。「代替率」は年金の給付水準を示す指標と考えたほうがいいから、細かい正確さを追うのは意味がない。いまは話を単純化して進めて、詳しいことは理解が深まったところで究明しよう。年金は「満身創痍」だから、よけいなところに首を突っ込むと脱線してしまう。

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